鬼の子が
鬼になるとは限らない
あなたは鬼にならずに
花になった
鬼の母とて
好きで鬼になったわけじゃなく
花にもなってみたかったから
以心伝心
子は花になった
鬼の親子は
夕焼け空の真下の家で
さんまを焼いて
夕飯仕度
いただきます
と鬼は言い
いただきます
と花は言い
味噌汁とご飯とさんまを
無言で食べる
時が経ち
鬼は空に帰り
花は地上に残った
「やっと帰ってくれたありがとう」
花は鬼の母が帰ってから
鬼を哀れみつつも
楽になった
花は朝に咲いて
みなを喜ばせ
「これがあの鬼の子とは」
と言われた時
花の目から涙がこぼれた
「どうして泣いているのだろう」
みなは不思議に思った
やっと本物の花になれたのに
みなは思った
おかあちゃん
花は空を見て
つぶやいた
花は
生まれてはじめて知ったのだ
さびしさの本当を
鬼の子が
鬼になるとは限らない
あなたは鬼にならずに
花になった
そして祈った
花は祈った
鬼のため
花のため
人のため
この世が
優しい人であふれますように
と
今も
ずっと
祈っています