無精子症など男性不妊のため子どもができない夫婦を対象に、第三者の提供精子を用いた体外受精を実施している東京都渋谷区の「はらメディカルクリニック」で今春、通院開始後に夫を病気で亡くした女性が死別の事実を医師に伝えないまま、女性の卵子と提供精子で作られた凍結受精卵(胚)の移植を受け妊娠していたことが10月21日、関係者への取材で分かった。
こうした治療の対象は、日本産科婦人科学会(日産婦)の会員医師向け会告(見解)や同クリニックのガイドラインで法律婚の夫婦に限られ、通常であれば民法の嫡出推定によって夫との父子関係が成立する。
治療時点で夫が死亡していた場合は民法の想定外で、精子ドナーが特定されれば法的な「父」として子どもから認知を求められる可能性がある。
ドナー保護の在り方を巡り、超党派の議員連盟が進める生殖補助医療の法制化論議にも影響しそうだ。
同クリニックは日産婦に報告した。
今回の問題を受けて提供精子による体外受精の新規実施を停止しており、再開の是非や時期を検討する。
関係者によると、女性は夫が死亡したため治療を受けられないことを理解しながら、子どもをもうけるため夫の両親らと話し合い、死別の事実を意図的に伏せていたことがクリニックのヒアリングで明らかとなった。
同クリニックは2022年2月に精子ドナーの一般募集を始め、1年間で約150人がドナー登録した。
このうち、出自を知る権利に配慮し、子どもが18歳以上になって希望すれば面会などに応じる「非匿名」ドナーの精子を昨年9月以降、体外受精に用いてきた。
今回のケースは女性が妊娠した後の今年6月、クリニックが実施した女性との「妊娠後面談」で判明した。
同クリニックは9月、院内のガイドラインを改定。
胚移植当日に夫に電話で意思確認することや、勉強会への参加義務付けなど複数の再発防止策を打ち出し、10月に施行した。
超党派の議員連盟が昨年まとめた生殖補助医療の法案たたき台ま出自を知る権利を踏まえ、従来「匿名」とされできたドナーの名前などの開示ルールを盛り込んだが、法制化は実現していない。
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