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BASEBALL馬鹿 BLOG

モザイクの一球NO.0013 1,247球の旋律 宇部商ナインの夏

2005-08-20 15:26:33 | モザイクの一球
  まるで知らない地平を往くように見える。
  夏の高校野球、山口県代表、宇部商業高校のナインたち。
  賛否両論あろうが、地方予選から固定したメンバーで戦い8月18日の準々決勝、対日大三高戦までひとりの選手交代も行わなかった。エースで四番打者の好永貴雄君も地方予選から一人で投げぬいてきた。
 大会前、宇部商は目標をベスト8に置いた。酒田南高校をやぶるとその目標もあっさりとクリアしてしまった。あとは彼らの知らない地平をどこまで往けるか、だ。ここまで来てしまえば、もはや選手を変えることはできない。たとえ、150球の熱投を演じ、翌朝の連投になろうとも。
  だから、余計にその姿は痛々しく映り、あからさまに残酷さをみせつけるのである。

  8月19日、甲子園。準決勝第一試合。
  宇部商と京都外大西の行き詰るシーソーゲームは8回裏、宇部商の攻撃野球のシンボル2番打者の上村が初球を叩いて中犠飛。7-6と1点を勝ち越し、勝負の行方は宇部商に大きく傾いたかにみえた。

  甲子園に出場した宇部商のエースはサウスポーが多い。20年前、桑田、清原率いるPL学園と決勝戦で死闘を演じたミラクル宇部商の田上。88年の木村。91年の金藤。そして、今回の好永。
  小柄ながら投手板の左端を使い、スリークォーターから投げ下ろす好永の投球は角度があり、打者の腰をことごとくひかせた。1回戦の新潟明訓戦こそ4失点だったが、続く静清工、酒田南、そして日大三高戦では安定した投球を披露。
  だが、この日の好永投手、肘が下がり、腕が振れない。握力も落ちていることは恐らく本人がマウンド上で一番よく分かっていたことだろう。

  しかし何故、勝利の女神はひたむきに投げ続けている好永投手にかくも無残な結末を用意したのだろうか。
  勝負の世界に「IF」は禁物だ。
  だが、この白熱した名勝負に「もしも」と言葉を続けてみたくなる。
  9回表、京都外大西の攻撃、5番打者、南本を投ゴロに仕留めた狭殺プレーで3塁走者を封殺していたら・・・・。
  或いは、9回裏、得点を許せない京都外大西は外野を前進守備に切り替えていたら、最後の打者、星山の打球は中堅手の頭上を超え、ミラクル宇部商の再現となっていたかもしれない。

  彼ら自身も知らない地平は恐る恐る渉って眺めてきたわけではない。犠打を極力使わない強攻策で勝ち取ってきたものだ。
  そして、地方予選から一貫して戦い続けたメンバーと1,247球という好永投手の熱投の末の結実である。
  だからこそ、京都外大西の9回表の長い攻撃を終わらせると、好永投手をはじめとする宇部商ナインに多くの観客から惜しみない大きな拍手が送られたのである。
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