ふりーまん師が仕事のため、早朝に家を出ることになった。
師は、「亀岡まで行ってみないか」と提案してきた。亀岡は京都の西側に隣接する市である。
行ったことがないところなので、クルマで乗せてもらうことにした。あわよくば、昼飲みできる店があるかもしれない。
だが、考えが甘かった。思いっきり、田舎だったからだ。昼飲みどころか、居酒屋すらなかった。
しかもまだ早朝、やることもない。
明智光秀が築城したとされる亀岡城は、宗教法人が管理しており、中に入ることができない。近くにある造り酒屋も、まだ早朝ということで、見学はできなかった。
さて、何しようかと途方に暮れていたら、1軒の喫茶店を見つけた。もう、なんでもいい。喫茶店で、ちょっとくつろぐか。
店の名前は「クニッテル」。
妙な名前である。少なくとも、フランス語ではなさそうだ。
これは後で分かったのだが、同市とオーストリアのクニッテルフェルト市が姉妹都市となっており、同市にはクニッテルフェルト通りという道があるという。そのロードサイドにあるのが、喫茶店の「クニッテル」だった。ということは、「クニッテル」というのは、オーストリアドイツ語なのだ。
その「クニッテル」、なかなかの古典喫茶店だった。
1972年の創業。スカイブルーと白のコントラストの外観に、店舗入口には三角屋根を施した間口がある。内観も、いかにもと思わせるオーソドックスな造り。
ボクは席に腰掛け、4種類あるうちのモーニングの中からAセットをオーダーした。
Aセットは、トーストにゆで卵、そしてドリンクの3点。これで450円である。
同じ京都府でも、「イノダコーヒ」とは打って変わった、モーニングだ。いや、比較するのは酷なのだが。
質素でhあるものの、トーストもゆでたまごも抜群にうまかった。これが、本来のモーニングなんだとボクはある意味感動した。
窓からは、亀岡城址公園のお堀が見え、美しい。お堀からはもやのようなものが立ち上り、幻想的な雰囲気を演出している。これを見ただけでも、ここに来た価値はあったと思った。
最近はすっかり初老に近づいたせいか、朝が断然好きになった。朝の風は爽やかで、心が洗われるようだ。その朝にいただく、質素ではあるものの、うまいコーヒーと朝食。僅か450円の贅沢。
「イノダコーヒ」も贅沢だったが、ボクには「クニッテル」のモーニングも贅沢だと思う。
好対照だが、そこにはそれぞれの内容の濃い物語がある。
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