
地下鉄銀座線末広町駅。駅を降りて地上に出ても、そこにはもう末広町という地名はない。現在は千代田区外神田という住所だ。
例えば、東京人(都市出版)の05年5月号に掲載されている昭和37年度版『地番入 東京都区分地図帖』を見ても、末広町という地名は存在しない。あるのはただ、路面電車の停車場の名前として残る「末広町」だ。そこで、今度は「新版 江戸から東京へ(一)」(矢田挿雲=中公文庫)を開いてみる。巻末にある大正11年3月の『東京案内大地図』を見て、ようやく末広町という地名を発見することができた。
今やこの末広町という地名を後世に伝えてくれるのは、東京メトロの駅名でしかないものと思っていた。大抵はビルや郵便局の名前で昔の地名が残っていたりもする。 例えば、末広町駅から数十メートル上野方面に歩くと、黒門郵便局が昔の地名で残っていたり、最近分譲した高級マンションには「黒門タワー」と名付けられたり、ひっそりと地名は残されていくものなのだが、末広町の場合、とんと見ない。
しかも末広町などと縁起のいい地名なら尚更使われてもいい名称である。
だが、わたしの知りうる限りでは見たことがなかった。
しかし、こないだ印刷会社のS栄印刷、Mさんに連れられていった居酒屋には堂々と「末広町」という旧地名が冠されていたのだ。
しかも、この店、末広町になぞらえて末広がりの「八」を店名に据える。どこまでも縁起を担ぐところがまた憎い。
お店は、すこしお洒落ダイニングが入った創作料理風居酒屋といった趣。中に入ると幾らか暗い。お洒落ダイニングと思ってはみたものの、いざ店内に入ってみればおじさん率99%のむさ苦しさが漂う。
今日の主役は編集部H谷川氏。昇進のお祝いに、とMさんが飲みに連れてきたというわけ。わたしはただ附いてきただけの男なのだ。
それでもしっかりとお酒と料理を堪能させていただいた。
まずは、生ビールで口を湿らせた後、なんとも豪勢な酒肴がオンパレードのように テーブルを飾ったのである。
マイワシの刺身。
マイワシと言えば、今や高級魚。鯨が食べちゃうから激減したらしく、捕鯨国では鯨を間引きするために捕鯨を再開する、という政治的に使われている魚だ。これが850円。確かに高い!昔は堤防でもよく釣れたもんである。H谷川氏は横須賀の港で。わたしは千葉港で釣った。
この他に「牛スジと大根の煮込み」がテーブルを彩る。
牛スジといえば、普通赤味噌仕立てを連想するが、この店の牛スジ煮は少し変わっている。
「テールスープを意識して作りました」という店員の言葉のとおり、スープの色は半透明。どうやら塩味のようだ。一口頂いてみると、なるほどこれはさっぱりとしてうまい。これは一押し!
そして、もうひとつの皿が「鯛の兜煮」だ。
店員が「お奨め」として一押しした「兜煮」はおおぶりの皿に豪快に盛られ登場した。箸でこさいで食べると、こりゃまたうまい。甘辛い兜煮は牛スジのスープで塩辛くなった口の中をほどよく中和してくれる。
この店のメニューの特徴は各地の郷土料理をその土地産の食材で作る、という点だ。例えば大山の地鶏のなんちゃらだとか、新潟県栃尾のかんちゃらだとか、いろいろなメニューが並んでいる。
残念なことに「末広町」と冠する店名に店のコンセプトは反映されていない。江戸料理を出すとか、という趣向はないようである。
さて、生ビール2杯目を飲み干して、焼酎に触手を伸ばした。
メニューを見ると、かなり多く品揃えをしている様子。
いろいろ眼で追っていくうちに、心躍る銘柄が見つかった。
「百年の孤独」(黒木本店)である。
だが、なんとショットで1000円もする。
値段としては普通のレベルなんだろうけれど、やっぱり高い。
やめておいて、「尾鈴山 山ねこ」(㈱尾鈴山蒸留所)を水割りで貰うことにした。
芋の香りが芳香。いいお酒はまず香りで楽しめるところが素晴らしい。
一方、H谷川氏は梅酒のソーダ割りに流れ、Mさんは相変わらず生ビールにとどまっていた。
あらかた、テーブルの上の料理はきれいさっぱりと片付けられ、H谷川氏は片手に 梅酒ソーダ割りのグラスをカラカラと揺らし、わたしは「やまねこ」水割りに口をつける。
その目の前でMさんの口は休むことなく動き続け、独壇場の夜は更けていくのだった。
【未完】
末広がりの八にあやかって。。。
さて、居酒屋ブログは今晩更新です。
昨夜書き終えたのに、写真を会社に忘れてしまい、今晩のアップになりました。
超長文。(長文て読んでくれないんだよねぇ)
乞うご期待!