馴染みの印刷会社のI関さんが退職することになった。
義兄が経営する会社を手伝うのだという。
慎重な性格からして印刷会社向きのこの人にはかなり世話になった。
しかも、I関さんの出身高校はわたしの高校の隣町の学校で、これまで社会に出てからというもの、同じ市内の高校に通った人に会ったことがなく、それも親近感を感じるひとつの要素だった。
そんな彼に、お世話になったお礼をしようとお疲れ様会を開催しようと企画し、わたしが幹事になった。
さて、どのような店で開催しようかと頭を悩ませた。普段、行き慣れた大衆酒場で開催するのは無茶だろう。ましてや立ち飲みとか。そこで、当たり障りのない居酒屋を探すのだが、さすがにチェーン店は避けたい。ネット情報で探していくと、価格も手ごろな「山海亭」という店に行き当たった。
どんな店なのか、予約をしに行きがてら、一度訪問してみることにした。
多慶屋の裏手、路地の片隅にある古民家風の店だった。
女性店員の対応もよく、ここなら問題ないと予約をした。
美しいなまこ壁に「山海亭」の文字が浮かび上がる。
雰囲気はいい。小料理屋のようだ。
堅牢な扉。まるで居酒屋には見えない。懐石料理風の瀟洒な建物だ。飲み放題つき、5,000円で交渉したが、とても、そんな金額には見合わない店の造りである。
急な階段をあがり、二階の個室へ。三階ではない。あくまでも二階だ。
部屋は少々狭かった。8畳間に10人が座ったのだから。
料理の内容は、豚肉のサラダにお造りは4点、揚げ物に鍋、そして〆がうどん。
鍋の具材はオーソドックスな野菜中心だった。しょう油ベースの田舎鍋。おいしい。けれどもヘルシーすぎて少し物足りない。さすがに、この金額では、これが限界だったか。恐らく、素材はかなりいいものを使っているのだろう。むしろ、この金額で、最高のものを提供してくれたと感謝しなければならない。
「居酒屋さすらい」史上、初の幹事役。
いやはや、ほとんど食べられず、ほとんど飲めず。
だから、お酒の飲み放題の内容を最後まで把握できなかった。
だが、I関さんはとても喜んでくれた。それがわたしにとってのごちそうだ。
解散した後、とてもお腹が減っていることに気が付いた。
冬の星がきれいだ。
そういえば、今日の自分の誕生日だったっけ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます