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居酒屋さすらい 1028 - おでんじゃん - 「華記少食」(香港 寶勒巷)

2016-06-25 10:05:53 | 居酒屋さすらい ◆海外

18年ぶりに歩く、重慶マンションの前。23時、黒人の男に「部屋あるぞ」と声をかけられた。

懐かしい。この感覚。

だが、まさか香港の再訪に妻と子どもが一緒にいるなんて、18年前のボクは想像もしなかっただろう。

重慶マンションの伏魔殿ぶりは相変わらずだった。

その重慶マンションの裏手側にあるホテルにチェックインしたのが23時半。妻も子どもも速攻で寝はじめたものの、ボクはいっこうに眠くならなかった。

約10年ぶりの海外旅行に興奮していたのだろう。

夜の1時まで眠る努力をしていたが、こりゃいかん。

コンビニにビールを買いに行くつもりで、ボクは外に出た。

 

ネイザンロードはよく通った通りだが、1本、筋を入ることはこれまでなかった。コンビニはすぐに見つかったが、真夜中にも関わらず、店がまだ開いていたり、多くの人で賑わっているのを見て、ボクはしばらく歩いてみることにした。

しばらく行くと、バーが立ち並ぶ一角に出た。

退廃的な空気が充満する。

 

18年前のクリスマスイブのことを思いだした。

ふらいんぐふりーまん師とモンゴルを目指すバックパッカーK通君とで、夜の香港に繰り出し、ボクらは一軒のバーに入った。

マカオの大小なのか、それともチンチロリンなのか、香港の荒くれどもがサイコロを転がす店で、ボクらはバドワイザーでささやかにクリスマスを祝った。

今はお洒落なスポーツバーとなっているが、どこかでビールでも飲もうかと思った。

どこに入ろうかと物色していたが、ギネスがパイントで100ドル以上することを知り、ばかばかしくてやめた。

それならば、麺屋にでも入って、ビールでも飲もうかと考えたが、ボクは店に入ることを躊躇して、そのまま通り過ぎた。

 

さて、ビールでも買って帰ろうかと思い、歩いていると、人が大勢たむろする街角に出た。

店の前でたくさんの人が集まっている。

なんだろうと思って、近づいてみると、多くの若者が串にさされた食べ物をほおばっている。

彼らはまだ10代か20代前半の若者ばかりだった。

ボクは驚いた。

25時を過ぎた街角に若者が集まっていることもそうだが、それよりもマクドナルドのような西側文化の店ではなく、香港のトラディショナルな小吃に若者が群がっている事実に。

ストリート系の小僧のような男も、眼鏡をかけたインテリのような女の子も皆串を頬張っていた。

 

しばし、その若者らを観察した。

彼らが食べているのは練り物だった。つみれのようなもの、つくねのようなものを一様にほおばっていた。それは焼きものではなく、煮込んでいるようで、ボクは人をかき分け、店内を覗くと、関東煮よろしく大きい保温器があり、そこに若者が食べる串ネタがぐつぐつと煮込まれている。

おでんじゃん!

 

店頭に出ているメニュー表に目を移す。

ボクがはじめに注視したのは、ロ卑酒、つまりビールの有無である。

メニュー表には河口とは書かれていたが、口に卑しい酒の表記はなかった。いや、書いてないだけで、ビールはあるのかもしれない。そう思い立ち、ボクは店内の冷蔵庫をつぶさに観察した。

だが、ビールらしきものはなかった。

そこで、ボクは近所のコンビニに走り、冷たく冷えたビールを購入し、再びこの練り物屋に舞い戻った。

そして、若者が注文する様子を見て、それに倣い、ボクは指を指して、合計5本の練り物をオーダーした。

購入金額が分からなかったので、ボクは適当に紙幣を出した。

 

店のおばちゃんはボクに何かを尋ねた。

入れ物の容器をどうするのかと言っているらしい。

要するに、テイクアウトするのか、ここで食べるのかと聞いている。

ボクは隣の若者が食べている発泡スチロールを指し、「これでいい」と返答した。

 

5本の練り物はその発砲スチロールに盛られて渡された。

40も半ばになろうとしている自分だが、まだ18年前のあのころのようなバックパッカーぽさが残っているのを感じ、思わず苦笑せずにいられなかった。

まず、一口ほおばってみる。

お、カレー味だ。

おでんのような昆布出汁とは思っていなかったが、まさかカレー味とは思ってもなく、ボクはおおいに意表を突かれた。

でも、おいしい。

そこで、ボクは缶ビールのタブを開け、ビールを立ち飲みした。

プシュッという音に周囲の若者が一斉に見た。数人の若者はボクを興味深そうに見ている。いい歳をした異国のおっさんがビールを片手に小吃を食べている。そんな奇異な目で。いや、もしかすると、屋外でアルコールを飲んではいけないのかもしれない。「なんと大胆な」。そんな視線にも感じる。

ともあれ最高だ。

真夜中の香港で、ビールを片手に屋台風の店で串種を食べる。

しかも、香港に着いてまだ2時間しか経っていないのに、ボクは随分ディープなところにいる。

まだまだ自分のバックパッカー魂は錆びていなかったと、一人悦に入る。

この瞬間がたまらない。

 

現地の人の日常性に溶け込む瞬間が、ボクにとってたまらない。

多分、それがボクの旅の視点であり、テーマなのだろう。

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2 コメント

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師よ (ふらいんぐふりーまん)
2016-06-29 21:13:41
K通君と三人で飲みに行ったのは、クリスマスイブではなく、クリスマスの日だよ、師よ。

イブの俺は、誰かとつるむのが格好悪いと思ったんで、結構遅くまでビクトリア・ピークに登ってブラブラして、師に「あいつ、こんな遅くまでどこ行ってんだよ。」と思わせてたはずだよ。(笑)

しかし、懐かしいな、香港。

当時はイギリス領、今は中国。そしてイギリスはEU離脱。

時の流れを大きく感じるねえ・・・。

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Unknown (熊猫)
2016-06-30 08:55:37
そうか、あれはクリスマスだったか。
記憶があやふやだよ。

ビクトリアピークはイブだったか。
懐かしいな。

「ラストクリスマス」。
あの年のクリスマス、WHAMが街中にかかっていたね。
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