新宿のど真ん中、怪しげな妖気を放ちながら地下の階層に入口が口を開けている。一人で入るならば、間違いなく踵を返してしまうところだ。
ここは、新宿アルタの裏側、7時をちょっと回ったところだが、真昼間のように明るいし、人通りも激しい。そんな、盛り場中の盛り場で、いくら「サントリーラウンジ」と書かれていても、店を知らない人にとっては、触らぬ神になんとやらだ。
だが、この日は怪鳥とその奥様に連れられて、今まさにその店の扉への階段を降りようとしているのだ。「伝説のバー」とか「昭和ノスタルジー」とか人は様々にそのバーを形容するという。
暗がりの階段を足元に気をつけながら降りていく。
背後から、怪鳥夫人H美さんがこんなことを囁く。
「まるで(この階段は)タイムトンネルのようよ」。
すると、階下にぼんやりとした灯りが現れる。その灯りに誘われて近づいてみると、いきなりドアがスーっと開いて、我々を迎え入れてくれた。観音扉の自動ドアなのだ。まるで、わたしはショッカーのアジトに侵入しようと試みて、見事に捕まる少年のようなのである。
そこには、シャンデリラを吊り下げたバーカウンターが現れた。
どこか、古臭いが、優しい雰囲気が溢れている。
だが、怪鳥は更に歩を進めていった。
「もう一つ下に行こう」。そして、またもや階段を降りていくと地下2階にもバーカウンターが現れたのだ。幸いなことに席が空いており、我々はすぐさまカウンター席を確保することができた。
やはり、店は落ち着きを払っていた。浮ついたところがなく、さりとて軽すぎず。それは、もうバーとしての威厳に満ちていて、ちっとも客を不安にさせるところがない。
「本当に安いんだよ」。
怪鳥が手にとって、メニューを見せてくれる。
「オレ、ハイボールを頼むけど」。
どれどれ、ハイボールの欄を目で追っかけてみると、なんと300円と書かれている。ここは確か、スタジオアルタの真後ろという立地。そんな新宿の真ん中でこんなに安く飲み物が飲めるのか。それとも、何か狐にでも騙されているとでもいうのか。
「オレにもハイボールを」とバーテンに告げると、ちょっととぼけた調子で彼はコクリと頷いた。
実は、ハイボールというものを飲んだことがなかった。
若い頃に勤めていた先で先輩から教えて教訓がある。
それは、「レーズンバターでハイボールを飲ると、早く死ぬゼ」。
その先輩は、事あるごとにおんあことを言っていたが、その当時から、わたしはハイボール自体、どんな飲みものか知らなかった。名前は聞いたことがあるが、今更聞くのは恥ずかしい。わたしは、ハイボールを理解しようともせず、その先輩に向かってただただ頷くだけだった。
私は元来ウィスキーを好まない。一時期カッコつけでバーボンなどを飲んだりしたが、どうも生来この手の蒸留酒は苦手なようである。だが、バーテンさんが慣れた手つきで実に見事に作って差し出してくれたハイボールの味はすっきりと爽やかに口の中に広がった。
「コレはウマイ!」
と思わず、口をつくと、バーテンさんはニコリと笑顔を作るのだった。
バーテンさんの仕事ぶりは実に手際がよかった。ジョージア・サテライツの曲をバックに曲芸をみせるバーテンとは大違い。実に手際よく、且つ丁寧に仕事をこなしていく。恐らく、頭の中に次の一手、そしてそのまた次の一手が描かれており、いかに効率よくお客様の注文に応えられるか、全て計算済みなのだと思う。その姿を見ているだけで、退屈などしないし、そんなバーテンさんの仕事が少し羨ましくも見えたりする。
今、ハイボールを片手に我々の間にはゆっくりとした時間が流れている。ビロードのように滑らかでコットンのように優しい時間。手に持つハイボールは僅か300円。だが、この極上の時間は果たしていったいどこで手にいれられようか。高いレストランや料亭で、この時間は買えるのだろうか。
それは王侯の時間。
僅か300円の。
ここに来れば誰でも王侯になれると思う。
洒脱な王侯に。
ここは、新宿アルタの裏側、7時をちょっと回ったところだが、真昼間のように明るいし、人通りも激しい。そんな、盛り場中の盛り場で、いくら「サントリーラウンジ」と書かれていても、店を知らない人にとっては、触らぬ神になんとやらだ。
だが、この日は怪鳥とその奥様に連れられて、今まさにその店の扉への階段を降りようとしているのだ。「伝説のバー」とか「昭和ノスタルジー」とか人は様々にそのバーを形容するという。
暗がりの階段を足元に気をつけながら降りていく。
背後から、怪鳥夫人H美さんがこんなことを囁く。
「まるで(この階段は)タイムトンネルのようよ」。
すると、階下にぼんやりとした灯りが現れる。その灯りに誘われて近づいてみると、いきなりドアがスーっと開いて、我々を迎え入れてくれた。観音扉の自動ドアなのだ。まるで、わたしはショッカーのアジトに侵入しようと試みて、見事に捕まる少年のようなのである。
そこには、シャンデリラを吊り下げたバーカウンターが現れた。
どこか、古臭いが、優しい雰囲気が溢れている。
だが、怪鳥は更に歩を進めていった。
「もう一つ下に行こう」。そして、またもや階段を降りていくと地下2階にもバーカウンターが現れたのだ。幸いなことに席が空いており、我々はすぐさまカウンター席を確保することができた。
やはり、店は落ち着きを払っていた。浮ついたところがなく、さりとて軽すぎず。それは、もうバーとしての威厳に満ちていて、ちっとも客を不安にさせるところがない。
「本当に安いんだよ」。
怪鳥が手にとって、メニューを見せてくれる。
「オレ、ハイボールを頼むけど」。
どれどれ、ハイボールの欄を目で追っかけてみると、なんと300円と書かれている。ここは確か、スタジオアルタの真後ろという立地。そんな新宿の真ん中でこんなに安く飲み物が飲めるのか。それとも、何か狐にでも騙されているとでもいうのか。
「オレにもハイボールを」とバーテンに告げると、ちょっととぼけた調子で彼はコクリと頷いた。
実は、ハイボールというものを飲んだことがなかった。
若い頃に勤めていた先で先輩から教えて教訓がある。
それは、「レーズンバターでハイボールを飲ると、早く死ぬゼ」。
その先輩は、事あるごとにおんあことを言っていたが、その当時から、わたしはハイボール自体、どんな飲みものか知らなかった。名前は聞いたことがあるが、今更聞くのは恥ずかしい。わたしは、ハイボールを理解しようともせず、その先輩に向かってただただ頷くだけだった。
私は元来ウィスキーを好まない。一時期カッコつけでバーボンなどを飲んだりしたが、どうも生来この手の蒸留酒は苦手なようである。だが、バーテンさんが慣れた手つきで実に見事に作って差し出してくれたハイボールの味はすっきりと爽やかに口の中に広がった。
「コレはウマイ!」
と思わず、口をつくと、バーテンさんはニコリと笑顔を作るのだった。
バーテンさんの仕事ぶりは実に手際がよかった。ジョージア・サテライツの曲をバックに曲芸をみせるバーテンとは大違い。実に手際よく、且つ丁寧に仕事をこなしていく。恐らく、頭の中に次の一手、そしてそのまた次の一手が描かれており、いかに効率よくお客様の注文に応えられるか、全て計算済みなのだと思う。その姿を見ているだけで、退屈などしないし、そんなバーテンさんの仕事が少し羨ましくも見えたりする。
今、ハイボールを片手に我々の間にはゆっくりとした時間が流れている。ビロードのように滑らかでコットンのように優しい時間。手に持つハイボールは僅か300円。だが、この極上の時間は果たしていったいどこで手にいれられようか。高いレストランや料亭で、この時間は買えるのだろうか。
それは王侯の時間。
僅か300円の。
ここに来れば誰でも王侯になれると思う。
洒脱な王侯に。
ハイボール(Highball)とは、スピリッツをソーダやトニックウォーターなどの炭酸飲料で割ったもの。日本では、ウイスキーをソーダ水で割ったものを一般的に指す。
となっていた。
で、俺が「あらた」で飲んだハイボールは、実はシロップ?ソーダを入れたものに、焼酎を入れ、レモンスライスをつけるという、焼酎ベースのハイボールだったんだよ。
しかし、焼酎でもハイボールと呼んでいいの?それは、酎ハイでしょう?しかもシロップって?
それは甘いんじゃないのか?
でも、何でハイボールって言うのかねぇ。
ウィキ読んでみるか。
はいぼーるってなんですか?!
・・・超基本的なことを知らなくてスミマセン。
この前もつ焼き屋さんに行った時に、
友達がハイボール頼んでたので、あれ以来気になってはいたんですが、
こちらでナイスタイミングで出てきました。
それにここのハイボール、アルコール度数高いからね。マスターは「17度位あると思うから飲みやすいおもてガンガンいくとすぐ酔うで。」って言ってたもんね。
さて、酎ハイについては怪鳥さんがおっしゃるとおり、「焼酎ハイボール」の略なんだと思うよ。しばらく前にテレビCMやってた缶酎ハイのCMでもそう言ってたからね。
なお、更にハイボールについて調べてみた。
サントリーのHPでは
http://www.suntory.co.jp/whisky/museum/enter/challenge/highball.html
ウイスキーベースのハイボールレシピが紹介されていた。
また、ウィキペディアではチューハイの項目で、チューハイの歴史が書かれていて中々面白い。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%82%A4
なお、ハイボールの名前の由来についてはウィキのハイボールの項
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB
こちらに諸説書かれている。
そして、それらを調べているうちに下町ハイボールという物に行き当たったんだが、これを作るのには「天羽の梅」という、酎ハイの素があるらしい。(一升瓶)
ウイスキー用と焼酎用の2種があるそうだ。
案外あらたのハイボールの秘密もここにあるかもしれないよ。
なお、そんな下町チックなアルコールについては、酔わせて下町さんのHPを参考にさせてもらった。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~nene/newpage74.htm
記者向きな性格だよ。
(今の記者はネットで調べて記事を書いている)
さて、まき子さん、分かってくれましたか。ふらいんぐふりーまん師が情報を提供してくれました。
しかし、ハイボールの語源て面白いね。何でそんなに諸説あるんだろ。
たまたまあちこちでハイボールにしたのか。誰かが、有名になりたくてでっち上げたか。
酔わせて下町さんのHPを見ると、なんと「ドブサワー」っていうのが見つかります。
まき子さん、知ってましたか?
わたしは、お目にかかったことありません。
ところで、「天羽の梅」っていうのは一度見たことあるよ。どこか忘れたけれど。
これは、既製品だろうけれど、こういうシロップ状のものを自作するお店もあるよ。当方で見たことあるのは、山城屋本店(居酒屋放浪記NO.0029)。ここでは、企業秘密というシロップをしようしてたよ。また、この酎ハイが飛ぶように売れるもんだから、その使用頻度が高い高い。嫌でもそのシロップを注入するシーンが目の前で展開されるんだ。
酎ハイとは焼酎ハイボールでしたか。
勉強不足ですみません。