居酒屋さすらい 1629 - 日曜日、昼飲み - 「裕栄（ゆうえい）」（足立区南千住）

※この記事は緊急事態宣言の発出前に訪問した際のものです。

とある記事の取材で、樋口一葉の足跡を辿った。竜泉にあった自宅跡、「たけくらべ」に登場する大鳥神社、樋口一葉記念館、そして吉原。数時間、歩きっぱなしでくたくた。腹も減ったし、何か飲むか。山谷を通ると歯がないおじさんが立ち飲む店があった。いや、店という体裁ではない。あばら家みたいな建物である。ちょっと離れたところで自分は散々迷った。この店に行くべきか。否か。だが、なんとか思いとどまった。

南千住の駅へ向かってみた。自分は北千住と同じように考えていたのだ。しかし、正午から開いてる店は皆無だった。もはや、これまで。万策尽きたかと思ったその瞬間、ビルの1階にポツンとたたずむ、居酒屋一軒。もしややってんじゃないかと近寄ってみると、なんともまぁ営業していた。日曜日の12時。なんとか、首の皮一枚で繋がった。

店に入ると、何人かの客が既に酒盛りをしていた。自分はカウンターに座り、「ホッピー セット白」をオーダー。しかし500円はちと高いな。

飲み物の値段設定で大方の店の方向性は分かる。高い店なのか、安価な酒場なのか。飲み物で稼ごうとしてるか、料理に力を入れているか。酎ハイ類のメニューを見ると、やはり400円する。やはり高い。

隣の客は作業着を着て、黙々と定食を食べている。酒は飲んでない。どうやら、午後も引き続き仕事らしい。

「もつ煮込み」をオーダー。

白味噌仕立てのせいか、一見それほど煮込まれてないように見える。具材に汁が沁みてないようだ。一口いただく。あしたのジョー、いや、案の定。

「中」おかわり、250円。やはり高し。もし、順調に「中」2杯おかわりすると、ちょうど1,000円という金額になる。この価格設定、なんとなくいやらしい。

正直なところ、もうこれにて終了にしたかった。飲んでいて余り、楽しくなかったし、値段も高い。傷口が広がる前に。けれど、まだこの居酒屋には魅力的なところがあるのではないかと一縷の望みを託し、「鳥の唐揚げ」（450円）を注文した。6個もついて450円はリーズナブル。でも、一人飲みの身としてはちょっと多い。

結局最後まで、この店の魅力を探すことはできなかった。でも、日曜日の昼間に開いていて、ホッピーがいただけただけでも感謝しないと。