朝からの雨が降り止まない。むしろ、夕方になるにつれ雨足はひどくなっていた。
地下鉄銀座駅の広いコンコースを歩く。エアコンが効いているのだが、背中につつつ~っと汗が流れ落ちる。
蒸している。まるで蒸し蒸しころころである。
すこぶる不快だ。
不快指数は針を振りきり、何故か終末時計はPM11:59分を指している、まるでそんな気候なのだ。
実はこれから食事をしに、妻と待ち合わせしているところである。こうした不快指数147%の日にぴったりの食べ物。じめじめしたうざったい雨の東京で食欲増進が図れる食事。『それがぁタイ料理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』(尾崎豊風に)『みんな一緒に歌ってくれるかぁい?』(Last Teenage Appearance Tour “Highschool Rock‘n Roll”より)
ということで、銀座にタイ料理を食べに出かけてきたのだった。
妻と合流し、地上に出ると兆度、数寄屋橋交差点のところに出た。何となく雨に煙った銀座はクルンテープ、もといバンコクに似てなくもない。サイアムスクエアからラーチャム通り周辺にかけた景色に。(もう3年もバンコクには行っていない。変わったんだろうなぁ、バンコクも)
目指すお店は「ティーヌン」銀座店。阪急デパート隣、首都高速の下、GINZA5の地下1階である。実に久方ぶりのタイ料理。いやはや楽しみだ。
タイ料理に関してはちとうるさい。料理に関して詳しくはないのだが、いかに忠実にタイ本場の味を出しているか、或いはいかにバンコクの風景を思い出させてくれるか、について厳しく評価をしている。
それを図る方法としてタイ料理屋では必ず最初に「ヤムウンセン」を頼むことにしている。「ヤムウンセン」とは「ハルサメと肉と野菜をマナオの汁、ナンプラー、唐辛子であえたすっぱくて辛いサラダ」(『まんぷくアジアでおやすみなさい』浜井幸子著、情報センター出版局)のことである。この料理の味によって大概そのお店の技量が分かるのだ。
かつて食べた日本のタイ料理屋でナンバーワンの味だったのが新宿歌舞伎町の「バンタイ」。ここのヤムウンセンはとにかく辛い。すっげぇ辛い。喉がヒリヒリして水をがぶ飲みしないと治まらない。それほど辛いのだ。
しかし、やっぱりタイ料理は辛くないといけないのである。それを日本人向けにアレンジして辛さを抑えるなんて言語道断の極みだ。その点、「バンタイ」のヤムウンセンは辛くて酸っぱく、おいしかった。
初めてタイを旅行し、ピサヌロークという町の市場で食べたそれと同じだった。
さて、ティーヌンのヤムウンセンは果たしてどうなのか。
安らかに微笑むタイの美少女に「ビールとヤムウンセン」と告げたのである。
頼んだビールは「シンハー」と言いたいところだが、実は日本の生。だって、生の方が安いんだぜ。生の方が。
シンハービールは何と650円もする!なんということか。
しかし、何で日本のタイ料理屋はシンハーが高いんだよ。カオサンのコンビニで買っても40バーツ(1バーツは約2.5円)でお釣りがくるはずだよ。しかも、ビッグボトルで。そんなことを考えると何か飲む気しないんだよなぁ。
でもね、シンハーの他にもタイ産ビールがメニューに書かれているんだ。象印ビールでお馴染みのクロスタービール。通称ビアチャン。これなら飲んでいいかな、と心揺れたけれど、考えあぐねて、日本の生ビールを頼んじゃったのです。はい。
生ビールを飲みながら店内を見渡してみる。店内といっても、GINZA5の通路に面しているから、店はオープンエアだ。
通路と店を隔てる壁のような風情でタイの屋台ワゴンが飾られている。客席はざっと20くらい。ピンクと白のチェックのテーブルクロスに透明のクロスがかけられたテーブルはいかにも現地の中級レストランといった按配。店員はいまどきのバンコクっ子らしい若い青年と微笑みを優しく湛える少女のようなタイ(だと思う)の女の子たちである。
僕らがテーブルに着いたときにはお客はまばらだったが、みるみるうちにテーブルはいっぱいになり、満席になってしまった。「この店は期待できる」と妻と二人でわくわくしていると、やがて長いお皿に盛られたヤムウンセンが小柄なタイ女性によっていよいよ運ばれてくるのが向こうから見えたのだった。
既にナンプラーとパクチーの絶妙なハーモニーの香りがしてくる。
「来た、来た」、妻はにこにこして泰風サラダが卓に置かれるのをいまや遅しと待っていた。(つづく)
地下鉄銀座駅の広いコンコースを歩く。エアコンが効いているのだが、背中につつつ~っと汗が流れ落ちる。
蒸している。まるで蒸し蒸しころころである。
すこぶる不快だ。
不快指数は針を振りきり、何故か終末時計はPM11:59分を指している、まるでそんな気候なのだ。
実はこれから食事をしに、妻と待ち合わせしているところである。こうした不快指数147%の日にぴったりの食べ物。じめじめしたうざったい雨の東京で食欲増進が図れる食事。『それがぁタイ料理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』(尾崎豊風に)『みんな一緒に歌ってくれるかぁい?』(Last Teenage Appearance Tour “Highschool Rock‘n Roll”より)
ということで、銀座にタイ料理を食べに出かけてきたのだった。
妻と合流し、地上に出ると兆度、数寄屋橋交差点のところに出た。何となく雨に煙った銀座はクルンテープ、もといバンコクに似てなくもない。サイアムスクエアからラーチャム通り周辺にかけた景色に。(もう3年もバンコクには行っていない。変わったんだろうなぁ、バンコクも)
目指すお店は「ティーヌン」銀座店。阪急デパート隣、首都高速の下、GINZA5の地下1階である。実に久方ぶりのタイ料理。いやはや楽しみだ。
タイ料理に関してはちとうるさい。料理に関して詳しくはないのだが、いかに忠実にタイ本場の味を出しているか、或いはいかにバンコクの風景を思い出させてくれるか、について厳しく評価をしている。
それを図る方法としてタイ料理屋では必ず最初に「ヤムウンセン」を頼むことにしている。「ヤムウンセン」とは「ハルサメと肉と野菜をマナオの汁、ナンプラー、唐辛子であえたすっぱくて辛いサラダ」(『まんぷくアジアでおやすみなさい』浜井幸子著、情報センター出版局)のことである。この料理の味によって大概そのお店の技量が分かるのだ。
かつて食べた日本のタイ料理屋でナンバーワンの味だったのが新宿歌舞伎町の「バンタイ」。ここのヤムウンセンはとにかく辛い。すっげぇ辛い。喉がヒリヒリして水をがぶ飲みしないと治まらない。それほど辛いのだ。
しかし、やっぱりタイ料理は辛くないといけないのである。それを日本人向けにアレンジして辛さを抑えるなんて言語道断の極みだ。その点、「バンタイ」のヤムウンセンは辛くて酸っぱく、おいしかった。
初めてタイを旅行し、ピサヌロークという町の市場で食べたそれと同じだった。
さて、ティーヌンのヤムウンセンは果たしてどうなのか。
安らかに微笑むタイの美少女に「ビールとヤムウンセン」と告げたのである。
頼んだビールは「シンハー」と言いたいところだが、実は日本の生。だって、生の方が安いんだぜ。生の方が。
シンハービールは何と650円もする!なんということか。
しかし、何で日本のタイ料理屋はシンハーが高いんだよ。カオサンのコンビニで買っても40バーツ(1バーツは約2.5円)でお釣りがくるはずだよ。しかも、ビッグボトルで。そんなことを考えると何か飲む気しないんだよなぁ。
でもね、シンハーの他にもタイ産ビールがメニューに書かれているんだ。象印ビールでお馴染みのクロスタービール。通称ビアチャン。これなら飲んでいいかな、と心揺れたけれど、考えあぐねて、日本の生ビールを頼んじゃったのです。はい。
生ビールを飲みながら店内を見渡してみる。店内といっても、GINZA5の通路に面しているから、店はオープンエアだ。
通路と店を隔てる壁のような風情でタイの屋台ワゴンが飾られている。客席はざっと20くらい。ピンクと白のチェックのテーブルクロスに透明のクロスがかけられたテーブルはいかにも現地の中級レストランといった按配。店員はいまどきのバンコクっ子らしい若い青年と微笑みを優しく湛える少女のようなタイ(だと思う)の女の子たちである。
僕らがテーブルに着いたときにはお客はまばらだったが、みるみるうちにテーブルはいっぱいになり、満席になってしまった。「この店は期待できる」と妻と二人でわくわくしていると、やがて長いお皿に盛られたヤムウンセンが小柄なタイ女性によっていよいよ運ばれてくるのが向こうから見えたのだった。
既にナンプラーとパクチーの絶妙なハーモニーの香りがしてくる。
「来た、来た」、妻はにこにこして泰風サラダが卓に置かれるのをいまや遅しと待っていた。(つづく)