土曜日夜の新小岩駅南口は大変な賑わい。
この日は草野球クラブの忘年会である。
♪12月、街はクリスマス気分。あちこちから思い出したようにジョンの声♪
12月になるとオレの心の中にsionが唄う「12月」が毎年忘れることもなく流れる。
そして、この日はジョンの命日だった。
一時期ほどではないにしろ、近年のクリスマスは地味だと思う。オレたちがハイティーン(死語)だった頃はバブル経済のただ中。12月の街はクリスマス狂想曲ともいえるような馬鹿騒ぎが繰り広げられていたような気がする。
新小岩の駅前にはそんな浮かれた空気はなかった。人の数は異様に多いが、街角はそんなに煌びやかではない。微かにケーキ屋さんからクリスマスソングが聞こえてくるが、ジョンとヨーコのハーモニーは聞こえてこなかった。
草野球クラブの面々はオレを含めて僅か5人しか集まらず、その5人が揃うと、我々一行はぞろぞろと監督に先導されながら現場に向かったのである。
駅裏の細い小路に出た。居酒屋が道の両側にひしめき合う。それはまたものすごい光景だった。大小様々な店があって、どの店も多くの客で賑わっている。立ち飲み屋もいくつか軒を連ねている。
なんだか、ワクワクしてきた。
それは、中野駅前の飲屋街や新橋烏森の繁華街に初めて足を踏み入れたときのような興奮だ。「一体、どれだけ通えば、全店を制覇できるのか」と。
歩いても、いっこうに店は途切れないと思っていた風景もいつしか、小路は暗がりになり、飲み屋が少なくなってきた。すると、突然やや寂れかかった店が現れる。
それが、07年の忘年会の会場、「居酒屋 鳥益」であった。
これぞ、大衆酒場といった風情の古い店である。
扉を開けると目の前はもう既に満席。しかし、監督は構わず、ズンズンと店内に入っていくではないか。監督は脇の階段を昇ろうとしている。どうやら2階もあるらしい。
2階について、まず驚いた。25畳はあろうかというお座敷である。
その座敷も我々が案内されたスペースを除けば、既にもう満席であった。
どうやらこの店、相当の人気店のようだ。
しかし、座敷はいい。
日本人なら黙って畳である。
まずは、全員生ビールを頼んだ。
生ビールのジョッキはごく普通のフツーの飾り気のないジョッキである。
ビールは多分、サッポロ黒ラベル(確証はない)。冷蔵温度はやや高めである。
次に肴のチョイスだ。
監督が家族で通うというこの店は、店名の通り、焼き鳥のお店である。そこで監督、のっけからその焼き鳥をガンガンと注文していった。
カシラにタン、ねぎ間。その値段、なんと105円。
今時、105円で焼き鳥が食べられる店はあまりない。持ち帰り専門の店でも今時100円以上は絶対にする。まず、これだけでも驚きだ。
この値段なので、実をいうと、さしてオレは品質には期待を寄せていなかった。だが、しばらくして運ばれてきた焼き鳥の実の大きさといったら。
麻布十番の名店、「あべちゃん」も焼きものの実はすこぶる大きいが、この店はもっともっと大きい。この実の大きさをしっかり伝えるために、写真を撮影しておけばよかった、と今更ながらに思うのである。早速食べてみる、しっかり火が通っていて、味も悪くない。これだけの実の大きさだから、火は炭であろう。
この値段で、これだけの量とは、この店が満員なのも頷ける。
そして、この値段を実現するためには、一体どこから焼き鳥を仕入れているのだろうか。
これは、あくまでオレの想像なのだが、もしかして、同店は焼き鳥の製造を内製化しているのではないだろうか。更に想像を膨らませると、鳥の生産すらも内製しているかもしれない。で、なければ採算は合わないだろう。
とにかく、この店の焼き鳥はとにかく実も値段も、そしてその味も破格なのである。
ちなみにつくねも食べてみた。つくねの値段は残念ながら失念してしまったが、やはり肉の厚さが尋常ではない。この肉厚のつくねは、是非お奨めである。
やがて、店の中がいよいよ騒がしくなった。
お座敷の向こう側に、いつのまにかイマドキの小僧どもが集まりはじめ、大声で騒ぎ始めた。店内は圧倒的に男性が多く占める。我々の後ろには壮年の男たちが6人のグループで焼酎を飲んでいた。
監督は、おもむろに07年シーズンの回想を始めた。
総括である。
チーム随一の野球センスの塊、M岡君は、「首位打者諦めてないっスよ」と言った。
まだ、シーズンは完全に終わっていないのだ。
しかし、監督は続けて07年シーズンを総括しようとしている。
オレは、「キャップの本塁打は凄かったネ」と言った。キャプテンの本塁打は鹿骨の球場で右翼の防護ネットに弾丸ライナーで突き刺さる快心の一発だった。
そのキャップは、仕事のため、この席にはいない。
僅か5人の忘年会はややしんみりとした雰囲気であった。
酒もつまみもテーブルからなくなり、オレは煮込み(420円)と酎ハイ(270円)をそれぞれ頼んだ。
煮込みは、さらさらスープの味噌風味。やや大きめの小鉢に大盛りで盛られていた。
「うまい!」
じっくりと煮込まれていて、モツにも味がしみている。こってりというよりどちらかといえばさっぱり系だ。
監督がひととおり、07年を総括して、いよいよ来る08年シーズンの抱負に話題はうつった。しんみりとしていた席が少し活気付いてくる。
その後、だいぶ話は熱を帯びた。
何杯かの酎ハイをお代わりしていくうちに、オレもすっかり酔ってしまった。
帰りぎわ、新小岩の街を駅に向かって歩いていると、再びsionの「12月」が頭の中に駆け巡る。
♪そして、オレときたら、いつもこのごろになると、なにかやり残したような、柔らかな後悔をする♪
この日は草野球クラブの忘年会である。
♪12月、街はクリスマス気分。あちこちから思い出したようにジョンの声♪
12月になるとオレの心の中にsionが唄う「12月」が毎年忘れることもなく流れる。
そして、この日はジョンの命日だった。
一時期ほどではないにしろ、近年のクリスマスは地味だと思う。オレたちがハイティーン(死語)だった頃はバブル経済のただ中。12月の街はクリスマス狂想曲ともいえるような馬鹿騒ぎが繰り広げられていたような気がする。
新小岩の駅前にはそんな浮かれた空気はなかった。人の数は異様に多いが、街角はそんなに煌びやかではない。微かにケーキ屋さんからクリスマスソングが聞こえてくるが、ジョンとヨーコのハーモニーは聞こえてこなかった。
草野球クラブの面々はオレを含めて僅か5人しか集まらず、その5人が揃うと、我々一行はぞろぞろと監督に先導されながら現場に向かったのである。
駅裏の細い小路に出た。居酒屋が道の両側にひしめき合う。それはまたものすごい光景だった。大小様々な店があって、どの店も多くの客で賑わっている。立ち飲み屋もいくつか軒を連ねている。
なんだか、ワクワクしてきた。
それは、中野駅前の飲屋街や新橋烏森の繁華街に初めて足を踏み入れたときのような興奮だ。「一体、どれだけ通えば、全店を制覇できるのか」と。
歩いても、いっこうに店は途切れないと思っていた風景もいつしか、小路は暗がりになり、飲み屋が少なくなってきた。すると、突然やや寂れかかった店が現れる。
それが、07年の忘年会の会場、「居酒屋 鳥益」であった。
これぞ、大衆酒場といった風情の古い店である。
扉を開けると目の前はもう既に満席。しかし、監督は構わず、ズンズンと店内に入っていくではないか。監督は脇の階段を昇ろうとしている。どうやら2階もあるらしい。
2階について、まず驚いた。25畳はあろうかというお座敷である。
その座敷も我々が案内されたスペースを除けば、既にもう満席であった。
どうやらこの店、相当の人気店のようだ。
しかし、座敷はいい。
日本人なら黙って畳である。
まずは、全員生ビールを頼んだ。
生ビールのジョッキはごく普通のフツーの飾り気のないジョッキである。
ビールは多分、サッポロ黒ラベル(確証はない)。冷蔵温度はやや高めである。
次に肴のチョイスだ。
監督が家族で通うというこの店は、店名の通り、焼き鳥のお店である。そこで監督、のっけからその焼き鳥をガンガンと注文していった。
カシラにタン、ねぎ間。その値段、なんと105円。
今時、105円で焼き鳥が食べられる店はあまりない。持ち帰り専門の店でも今時100円以上は絶対にする。まず、これだけでも驚きだ。
この値段なので、実をいうと、さしてオレは品質には期待を寄せていなかった。だが、しばらくして運ばれてきた焼き鳥の実の大きさといったら。
麻布十番の名店、「あべちゃん」も焼きものの実はすこぶる大きいが、この店はもっともっと大きい。この実の大きさをしっかり伝えるために、写真を撮影しておけばよかった、と今更ながらに思うのである。早速食べてみる、しっかり火が通っていて、味も悪くない。これだけの実の大きさだから、火は炭であろう。
この値段で、これだけの量とは、この店が満員なのも頷ける。
そして、この値段を実現するためには、一体どこから焼き鳥を仕入れているのだろうか。
これは、あくまでオレの想像なのだが、もしかして、同店は焼き鳥の製造を内製化しているのではないだろうか。更に想像を膨らませると、鳥の生産すらも内製しているかもしれない。で、なければ採算は合わないだろう。
とにかく、この店の焼き鳥はとにかく実も値段も、そしてその味も破格なのである。
ちなみにつくねも食べてみた。つくねの値段は残念ながら失念してしまったが、やはり肉の厚さが尋常ではない。この肉厚のつくねは、是非お奨めである。
やがて、店の中がいよいよ騒がしくなった。
お座敷の向こう側に、いつのまにかイマドキの小僧どもが集まりはじめ、大声で騒ぎ始めた。店内は圧倒的に男性が多く占める。我々の後ろには壮年の男たちが6人のグループで焼酎を飲んでいた。
監督は、おもむろに07年シーズンの回想を始めた。
総括である。
チーム随一の野球センスの塊、M岡君は、「首位打者諦めてないっスよ」と言った。
まだ、シーズンは完全に終わっていないのだ。
しかし、監督は続けて07年シーズンを総括しようとしている。
オレは、「キャップの本塁打は凄かったネ」と言った。キャプテンの本塁打は鹿骨の球場で右翼の防護ネットに弾丸ライナーで突き刺さる快心の一発だった。
そのキャップは、仕事のため、この席にはいない。
僅か5人の忘年会はややしんみりとした雰囲気であった。
酒もつまみもテーブルからなくなり、オレは煮込み(420円)と酎ハイ(270円)をそれぞれ頼んだ。
煮込みは、さらさらスープの味噌風味。やや大きめの小鉢に大盛りで盛られていた。
「うまい!」
じっくりと煮込まれていて、モツにも味がしみている。こってりというよりどちらかといえばさっぱり系だ。
監督がひととおり、07年を総括して、いよいよ来る08年シーズンの抱負に話題はうつった。しんみりとしていた席が少し活気付いてくる。
その後、だいぶ話は熱を帯びた。
何杯かの酎ハイをお代わりしていくうちに、オレもすっかり酔ってしまった。
帰りぎわ、新小岩の街を駅に向かって歩いていると、再びsionの「12月」が頭の中に駆け巡る。
♪そして、オレときたら、いつもこのごろになると、なにかやり残したような、柔らかな後悔をする♪
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