栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

福岡市長選 新人、吉田氏当選の背景

2006-11-19 23:30:44 | 視点
 19日投票が行われた福岡市長選は現職の山崎広太郎氏を破り、新人候補の吉田宏氏が当選確実にした。
 この選挙、終盤戦は民主対自公の対立構図で捕らえられていたが、選挙民にとっての構図は山崎対反山崎、開発推進対市民生活重視の構図である。

 当初、吉田氏陣営の懸念材料は反山崎の有力候補が吉田氏のほかに高山前市議がいたことだ。
ともに民主党の推薦を目指していただけに、反山崎票が2分され、共倒れになる危険性があったことが1点。
 2点目は吉田氏の出身地域が北九州で、北九州市長選に出るのではないかと思われていたこと。選挙に出たがり屋と思われることは無党派層に対して大きなマイナス要因になる。
 3点目は民主党市議団内が当初、吉田氏支持で一本化できていなかったことだ。

 だが、最終的に吉田氏が勝利を掴んだ要因は何か。
もちろん民主党本部が対自公という対立軸で動き、民主党が党を挙げて全面的に応援態勢に入ったことが大きかったのは言うまでもないが、そのほかにいくつか挙げるとすれば
1.高山前市議陣営の戦術的失敗
 高山前市議の失敗は民主党の推薦が得られなかったことだが、66歳という年齢的なハンディがあったことは間違いないだろう。
ショートリリーフの1期だけなら問題ないだろうが、最低2期、できれば3期まで託せるかという時に年齢面がマイナスになったと思われる。

 高山陣営で特に目立ったのはPR戦術の失敗である。
 近年の選挙は米国式のイメージ選挙になりつつあり、選挙ポスターの作り方だとか、キャッチフレーズといった無党派層を意識したPR戦術が選挙結果を左右するようになってきだしている。
 この点を高山陣営は過小評価していたように見受けられる。
例えば選挙カーでの「まかせていいとも」「きょうは高山」の連呼を聞いた時、何を言おうとしているのか全く理解できなかった。
それがタモリのTV番組「いいとも」からきており、立候補に当たってタモリを引っ張り出していたことと関係あると気付いたのは随分後になってである。
このように考えなければ分からないキャッチフレーズを使うこと自体、PR戦術として失敗である。

 さらに致命的なのはこれから(明日)の市政を任せる市長選のキャッチフレーズに、「明日」とか「未来」ではなく「きょう」を打ち出した点である。
きょうは高山で明日は高山ではないのかと感じさせるまずさである。
 このように吉田陣営は高山陣営の選挙戦術のまずさに助けられたのは否めない。

2.山崎氏の胡散臭さ
 対山崎氏で吉田氏が決定的な勝利を掴んだ要因は山崎氏の市民に対する裏切りである。
 山氏が市長になれたのは選挙民が積極的に山崎氏を選んだのではなく、消去法で選ばれた結果だったのだが、そのことを本人が忘れてしまっていた。
 山崎氏が市長になれたのは開発主導型の桑原前市長のやり方に選挙民がノーと言った結果であり、反桑原ならある意味誰でもよかったのだ。
つまり積極的に選ばれたのではなく、反桑原・反開発というだけで選ばれたのに、当選後、桑原氏を顧問に迎えたり、公約に反して開発を推し進めようとしだした。その代表がオリンピック誘致に名を借りた須崎埠頭の再開発である。

 こうした山崎氏の選挙民に対する裏切り行為に今回、選挙民がノーと言ったのだが、それは再開発事業の裏に利権の臭いを嗅ぎ取ったからにほかならない。

 さて、吉田新市長についても同じことが言える。
反山崎の代表として選ばれただけで、それを自らが選ばれたと勘違いすると、今回の山崎氏と同じ運命をたどることになるだろう。

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