栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

なぜ行政の当初予測は狂うのか。

2008-02-03 18:27:15 | 視点
福岡市営地下鉄七隈線 3日開業3年、苦戦続く 沿線人口伸び遅く バスとの接続も不十分(西日本新聞) - goo ニュース
 福岡市の市営地下鉄七隈線が開業3年を迎えたにもかかわらず当初予測の半分程度にとどまっているという。
 市営地下鉄の例に限らず、およそ全国の自治体で行政が計画したハード整備が、予測以上とまではいわなくてもせめて予測通りに行ったという例はないのではないだろうか。

 なぜ、地方自治体が手がける計画は事業は当初予測通りに行かないのか。
その理由はいくつかある。
1.まず、計画の立て方が非常に甘い。
 甘くなる理由は明らかだ。
彼らは公務員であり、誰一人自分の金で事業をやるわけではなく他人の金(実は税金なのだが)で事業をやるわけだから、端から甘くなる。
もし民間と同じように会社組織でやるなら--但しその場合でも事業をやる人達は株主としてなにがしかの資金を提供することが条件だが--事業計画は非常にシビアになるはずである。
 それを失敗しても自分の懐が一切痛まないから計画が甘くなるのだ。
もっといえば、自分のポストを含め、何らかの甘い汁がそこで吸えるから(吸っているから)にほかならない。

2.ほとんどの計画がバブル期に立てられたものだから。
 今回の福岡市の市営地下鉄の例でもそうだが、実態が当初計画と大きく外れているものはバブル期に計画され、その後抜本的な見直し・修正がなされずに実施されているものが大半のはずだ。
 地下鉄七隈線などはその最たるものだろう。「乗客数が伸びない背景には、沿線開発による人口増が予想を下回り」などというのは、それこそ当初から分かっていたことで、言い訳にしてももう少しましな言い訳を言ってもらいたいものだ。
 この言葉が市関係者から出たものではなく、もし新聞社が書いたものだとすれば西日本新聞社ももう少しきちんとした分析記事を書くべきだろう。

3.事前の調査報告書がいい加減。
 どのような計画も一応民間の調査会社・研究所に事前予測調査報告書を依頼する。
そしてそこから出てきた調査内容を元に計画を進めるという体裁を形状はとっている。
 しかし、実際には調査を依頼された会社が依頼主の意に沿わない方向の報告書を出すことは少ない。せいぜい多少の疑問を呈する程度で基本線は皆認めた上で報告書を作成するのである。
なぜなら彼らの多くは行政でメシを食っているからであり、今後のメシの種をなくすような無謀なことは絶対にしない。
 かくして行政が関知する事業計画はバラ色に染まり、後で苦しむのは市民ということになる。

4.一度進み出した事業は絶対中止しない。
 行政というのはどんなに採算が取れないと分かっても、やり出すと途中では絶対中止しない。
その代わりに続ける言い訳を出してくる。
例えば今度の場合でも「博多駅に接続されていないから利用者数が伸びない」という。
となれば、次に博多駅までの延伸工事をしようということになり、また余分な金を使う。
延伸した場合に本当に見込み通りに利用者数が伸びるのかどうかということについてはきちんと調査もしないし、誰もそのことに真っ正面から言及しようとはしない。

 まさにムダな事業の連鎖が延々と続くわけだ。


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