栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

熟成を待つ

2009-10-20 23:49:18 | 視点
 我がことながらつくづく嫌な性格だと思う。
一気呵成にやるということがあまりない。
かといって飽きっぽいわけではない。
どちらかというと、執着する方である。
一度抱えたテーマは簡単に捨てない。
ならば、さっさとやってしまえばいいようなものだが、これがなかなかできない。

 まず、嫌な仕事はやりたくないから、先に内容を聞いてしまう。
面白そうなら引き受けるし、意に沿わないものなら断る。
だから、引き受けた後でギャラを聞き、しまったと思ったこともしばしばだ。
ギャラの話しを最初にしてないから、引き受けた後でギャラが分かった時はもう遅い。
いまさらそれでは、とは言いにくい。
これではビジネスにならない。
だから、「マネージャーが要りますね」とは過去、何度も言われた。

 思えば社会人になった時からしてそうだった。
初任給も知らずに入社し、おまけに口約束だけで人より3時間余分に働いた。
自分の給料が分かったのは1か月後の給料日だった。
当時の大卒初任給の相場より低かったが、まあ入寮していたので金を使うこともなく、寮費を払うと若干手元に残った。
だから不満はなかった。

 当時とは仕事が変わっていまは書くことを生業としている。
ところが、これがまた遅い。
細かい筋立てを考えて書いているわけではないので、途中で方向が変わることもままある。
登場人物が歩くに任せているところがあるから、作中で登場人物が歩き出さないと困る。
そこで筆が(正確に言うとキーボードを打つ手が)パタッと止まってしまう。

 パタッと止まったまま1年近くがたった。
途中何度か書きかけたことはあったが、最初のフレーズは出るがその後が続かない。
「転換期を生きた宮本武蔵」などは中断したまま10数年がたった。
作中の武蔵が歩き出さない、というか、自分の中で熟成してこないのだ。
こういう時は仕方ないから、じっと熟成するのをひたすら待つ。
酒造りのように、麹が発酵し、熟成するのを待つのだ。
そうしていると、そのうち麹の方から語りかけてくる。
もう、そろそろいいよ、と。

 酒がうまい季節になったからでもないだろうが、やっと「旨い酒造りにこだわる6代目の挑戦」パート2(日本酒編)を書きたいという気持ちが熟してきた。
 さて、旨い酒のような作品に仕上がるかどうか・・・。