4月に定期昇格を行う会社も多いが、まれに「昇格したために却って賃金が下がる」という現象が生じることがある。一般社員が管理監督職に昇格すると、従来支払われてきた残業代がなくなるので一般社員よりも賃金が低くなってしまうという、言ってみれば“制度上の不具合”だ。
これを「昇格減給」と言う。用語的には、こういうケースを「減給」と称するのは実は不適切であり、本当は「昇格“降給”」とでも呼ぶべきだが、一般的に「昇格“減給”」と呼ばれているので、本稿ではそれに倣うことにする。
会社は、人事権の行使として、合理的な理由に基づいて社員を昇格させたり降格させたりできる。また、それに伴って降給が起こりうることについては、裁判所も是認しているところだ。
しかし、理屈の上ではそうであっても、月々の収入が減少するのは社員の生活に直接影響する話なので、運用面での配慮は必須と言える。昇格に伴う基本給や役職手当の昇給額が残業代を上回るように制度設計しなおせればベストなのだが、それが難しければ、当分の間「調整手当」を支給する等の方策を検討しなければならないだろう。
せっかく昇格させたのにそれが徒となってモチベーションダウンの要因とならないよう、知恵を出したいところだ。
なお、そもそも、その昇格が明らかに賃金減額を企図したものであるなら“人事権の濫用”であるし、昇格後も労働基準法に言う「管理監督職」に該当しないなら引き続き残業代を支払わなければならないので、その点は誤解の無いようにしておかれたい。
※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
(クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
↓
