会社を経営していく中では、従業員を解雇しなければならないときもあるだろう。
無論、解雇は最終手段であるので、解雇を回避するべく努力を払った後で、しかも、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当でなければ、解雇はできない。また、解雇するに際しては、労働基準監督署長の除外認定を受けた場合を除き、30日前までに予告するか、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(労働基準法第20条)。
ところで、解雇予告手当の計算に「平均賃金」を用いることは意外な盲点らしく、解雇予告手当を「30日分の“賃金”」だと誤解している人も多いようだ。
平均賃金は、直近3か月間(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から遡って3か月間)の賃金額をその期間の総日数で除して求めた金額であって、「雇用契約上の賃金」とは似て非なるものだ。
例えば、日給1万円(通勤費その他の手当は支給しないものとする)の労働者が9月~11月の3か月間(ここでは暦月とする)に「60日」勤務していたとする。
この場合、この期間中の賃金額「600,000円」を「91」で割って得られる「6,593円40銭」が平均賃金ということになり、この労働者を解雇する場合の解雇予告手当は、この額の30日分である「197,802円(以上)」となる。
ただし、上記と同じ前提で、3か月間の勤務日数が「50日」だったとしたら、その場合の平均賃金は「5,494円50銭」ではなく「6,000円」となり、解雇予告手当は「180,000円(以上)」と算出される(労働基準法第12条第1項ただし書きによる平均賃金計算の特例)ので、注意を要する。
ただ、いずれにせよ、日給の30日分(300,000円)ではないのだ。
解雇予告手当を余分に支払うのは、もちろん労働基準法に違反しないのだが、それを意図したならともかく、法律を誤解していたために解雇対象者を喜ばせることになるのは、会社にとって無念な話ではなかろうか。
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