会社の取締役は、基本的には労働者でないので、雇用保険には加入しないのが原則だ。しかし、取締役であっても、同時に「部長」・「支店長」・「工場長」など従業員としての身分を有し、「賃金」を受けている者は、その部分については「労働者」であるので、雇用保険の被保険者となる。
この点に関しては「兼務役員は雇用保険に加入することが“できる”」と認識している人も少なくないが、労働者である以上、雇用保険に加入するか否かを本人や会社が任意で選択できるわけではない。
具体的な兼務役員の雇用保険加入手続きとしては、管轄ハローワークに『兼務役員雇用実態証明書』を提出して被保険者資格を取得することになる。その際には、「現に従事する(労働者としての)職務内容」と「役員としての担当業務」ならびに「賃金額」と「役員報酬額」を、明確に区分しておかなければならない。
ところで、まれに、「監査役」が「総務部長」を兼務しているといった会社を見掛けることがある。会社法第335条は「監査役は使用人を兼ねることができない」と定めているので通常はありえない形態だが、旧商法は「株式会社」には「監査役」を置くことを義務付けていたこともあって、特に同族経営の会社でこういうケースが見受けられる。こうした場合、雇用保険の扱いはどうなるのだろうか。
実は、監査役が同時に従業員身分を兼務するケースであっても、その労働者部分については雇用保険に加入することになる(S.34.1.26 基発48号)。ただし、これは、労働者を保護するための措置であって、会社法違反の状態を行政当局が是認したと理解すべきではない。
ちなみに、取締役であれ監査役であれ、離職した場合に失業給付を受けるには、その登記を外さなければ「失業」と認定されない。実務においてはこのことも覚えておきたい。
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