ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

法人役員の業務上傷病に健康保険が使える?

2014-03-13 16:28:04 | 労務情報

 国民健康保険は、業務上・業務外にかかわらず「すべての傷病」を保険給付の対象としている。
 一方で、健康保険(健保協会または健保組合管掌のもの)は、従来、その給付対象を「業務外の傷病のみ」としてきたが、先般の健康保険法改正により「労災保険の給付対象とならない傷病を給付対象とする」と、微妙に変更された。この法改正の背景には、健康保険の被保険者・被扶養者が副業としての請負業務中やインターンシップ中に負傷した場合など、労災保険でも健康保険でも救済できないケースが頻発したことがあった。

 ところで、この点に関して、法人役員は(特別加入していない限り)そもそも労災保険の対象ではないことから、「法人役員の業務上傷病」についても健康保険が使えるようになった、と認識している例が一部に見られる。
 無論、これは誤解だ。被保険者数5人以上の事業所においては、従来通り、法人役員の業務上傷病は健康保険の給付対象とはならない(健康保険法第53条の2)。法人役員の業務上傷病は使用者側の責めに帰すべきものであるため、労使折半の健康保険制度から保険給付を行うことは適当でないとの考え方によるからだ。

 しかし、ややこしいことに、被保険者数5人未満の事業所においては、平成15年の厚労省通達により「一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している法人役員の業務上傷病」について保険給付の対象とする運用がなされてきた経緯から、今般の法改正後も、引き続き同様の措置が講じられている。
 ただ、これに関しては「一般の従業員と著しく異ならないような労務」という部分には要注意だ。つまり、経営者としての固有業務(例えば、資金繰りのための銀行折衝や同業者団体の会合への出席など)に起因する傷病は、やはり健康保険ではカバーできないのだ。

 こういった点を正しく認識したうえで、経営者自身の対策としては、労災保険の特別加入や民間の保険を活用するなど、自社に合った対応を考えるべきだろう。


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