従業員から「退職願」(「退職届」でも効果は同じ。以下、本稿では「退職願」で統一する)が出されたとき、会社がそれを受理しないことは許されるのだろうか。
答えを先に言ってしまうと、「不受理が許されるケースもあるが、受理しないことに意味が無い」ということになる。
何とも歯切れの悪い表現だが、つまり、こういうことだ。
例えば、契約社員が期間満了前に退職するのは契約違反であるので、やむを得ない事情がある場合を除き、会社が退職願を受理しないことは許されるものと解される。しかし、退職願を受理しなかったところで、会社は本人の意に反する労働を強制することはできない(労働基準法第5条)のだから、退職させないことの意味が無いのだ。
いわゆる正社員が、就業規則に「退職願は1か月前までに提出すること」と定めてあるのを守らなかった場合でも、あるいは、民法第627条(第1項に定める「2週間」もしくは第3項に定める「3か月」)の期間内の退職を希望した場合でも、考え方は同じだ。
したがって、退職願が出されたら、会社は「黙って受理する」のが正しい対処と言えよう。
ちなみに、「慰留」は、インフォーマルな“相談”の段階ならともかく、正式に意思表示された以上、引き留めても従前同様の働きは期待できないので、徒労に終わる可能性が高い。
ところで、そうは言うものの、唯一、退職願を受理してはいけない場合がある。それは、「懲戒解雇を予定している場合」だ。懲戒解雇された者には退職金の全部または一部を支給しないこととしている会社も多いが、それだけが理由ではない。
当該従業員が退職してしまうと、会社が懲戒することはできなくなる。本人が会社からいなくなるという結果は同じだとしても、組織の規律を維持するうえで「会社が懲戒した」という事実を残すことが重要なので、こうした場合には自己都合退職させてはならないのだ。
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