就業規則に「会社の許可なく業を営み、又は、在籍のまま他に雇われてはならない」との規定を置く会社は多い。
しかし、これに関しては、一般論で言えば、会社は就業規則に特約を設けることができ、従業員はこれに従う義務を負うものとされるが、従業員が会社の指揮命令下に無い時間帯には何をするのも自由であるとの意見も根強く、専門家の意見も賛否が分かれている。
では、裁判所はどう判断しているかと言うと、二重就労禁止規定を置くこと自体は肯定しつつも、それをもって懲戒処分を科すことには柔軟な運用を求めるケースが多い。
具体的には、競合会社の取締役に就任した従業員に対する懲戒解雇を有効とした事件(名古屋地判S47.4.28)、建設会社の事務員が夜間にキャバレーで働いていたことを理由とする普通解雇を有効とした事件(東京地決S57.11.19)がある一方で、病気休職中に内職をしたのは就業規則で禁止される二重就労にはあたらないとした事件(浦和地判S40.12.16)、運送会社の運転手が年に1~2回、貨物運送の副業に就いていたことは業務に具体的な支障は生じないとしてこれを理由とする解雇を無効とした事件(東京地判H13.6.5)も挙げられる。
総じてみれば、会社が二重就労を禁じる目的は、企業秩序を維持し、秘密の漏洩や信用の失墜を防ぎ、従業員の労務提供に支障が無いようにするためなのであって、その目的に反しない限り、二重就労したことをもって従業員に懲戒を科すことはできないと考えるべきだろう。
むしろ、今日的な労務管理の観点からは、二重就労を一律に禁止するのでなく、会社への届け出を徹底させ、条件付きで二重就労を容認していくのが賢明な方策とも言えそうだ。
ちなみに、労災保険法では、平成18年の法改正により、二重就労における「第1の事業場から第2の事業場へ移動する間の事故」も“通勤災害”として認められることになっている。法律が二重就労を前提として考えるようになったことは、検討材料に加えておきたい。
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