労働基準法は業務上の死亡や障害について被災労働者(またはその家族)に相応の補償を行うことを事業主に義務付けているが、事故が起きても、通常は労災保険を使うので、会社が直接補償することは、まず無いと考えて良いだろう。まあ、そういう時のための保険なのだから当然と言えば当然かも知れないが。
ところで、会社は、労災保険を使って補償したことをもってすべてが解決したと思ってはいけない。
と言うのも、会社が負うべき“民事的な責任”は、労働基準法や労災保険法が定める補償義務とは別に考えなければならないからだ。
事故の原因が、業務命令自体に違法性が有ったためであるなら「不法行為」として、会社が安全配慮義務(労働者が安全に仕事できるよう配慮すべき会社の義務)を果たさなかったためであるなら「債務不履行」として、民事訴訟を提起されることも想定しておかなければならないだろう。
そして、事実、訴訟にまで到ったケースでは、「労災保険の給付でカバーしきれない損害については会社が負担すべし」と判断されている例が多い。もっとも、その労働者の死亡または障害による逸失利益のうち、どの程度の割合が会社の責任かとか、本人の過失分を相殺するかという点に関しては、ケースバイケースと言えるが。
これに備えて、会社としては、損害賠償責任保険(労災上乗せ保険)等の導入を検討するのも良いが、それ以前に、事故を予見して回避する態勢を作っておくことこそが急務と言えよう。ただし、これは、訴訟に対応するためと言うよりも、業務を安全かつ効率的に進めるために必要なことと認識しておくべきだ。
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