消費者庁の「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」は、去る12月15日、最終報告書を取りまとめた。
この会議は、当該制度の認知度が低く、通報に係る紛争も未だ頻発している現況を踏まえ、その実効性を高めるために平成27年6月から開催されてきたもので、消費者庁では、この報告書およびパブリックコメント(2月末まで受付中)を材料に、公益通報者保護法の改正について具体的な検討に取り掛かることとしている。
この報告書における指摘は多岐にわたるが、中でも特筆すべき事項として、「不利益取扱いに対して何らかの行政措置(企業名公表・行政指導等)を講じる方向で検討」ということが挙げられるだろう。
当初は「不利益取扱いに対する刑事罰規定」を新設することも視野に入れて検討されてきたが、最終報告書では刑事罰規定は見送られ、まずは行政措置を導入する方向性が打ち出された、という経緯がある。
しかし、公益通報者保護法には刑事罰規定が(当面は)盛り込まれない方向性に落ち着いたとは言え、例えば労働基準法(同法違反の事実を行政官庁等に申告した労働者に対して不利益取扱いをした事業主は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処することとしている)のように既に刑事罰規定を備えている法律もあるし、今般提言された「行政措置」もそれなりに抑止効果がありそうだ。
また、民事的な訴訟沙汰が表に出ることで“社会的制裁”を受ける可能性もある(企業レピュテーションへのダメージはむしろこちらの方が大きい)ので、経営者のスタンスとしては、そういう事態を避けるべきなのは変わらない。
そのためにも、社内に「内部通報制度」を整備しておきたい。これは、会社の法令違反や不正行為等を知った従業員が社内に設置された窓口に通報できる仕組みのことで、会社にとっては次のようなメリットが有るとされる。
(1) 問題が小さなうちに解決でき、大きな損害を被らなくて済む
(2) 不祥事が突発的に外部へ公表されることによる風評リスクを軽減できる
(3) 社内に、違法・不正行為に対する牽制意識が働く
まずは社内の自浄能力を高めることをの考えることこそ、会社の進むべき道を誤らせないための第一歩と言えるだろう。
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