労働契約を締結する際には、労働条件を書面で通知しなければならない(労働基準法施行規則第5条第3項)。この書面の様式は自由(H11.1.29基発45号)なので、必要事項の記載された雇用契約書をもって、労働条件の通知を兼ねさせている会社も多い。
ところで、そこで会社が提示する労働条件は、募集に用いた求人票や求人広告や募集要項(以下、「求人票等」と呼ぶ)と異なってはいけないのだろうか。
この問いへの答えとしては、求人票等と異なる労働条件で雇用契約を締結すること自体は違法でないとされている。
なぜなら、労働契約の内容は、雇用契約書や就業規則等に明記された労働条件および確立した労使慣行によって定まるものであって、求人票等の記載内容は従業員募集の“誘因”に過ぎないからだ。
よく「チラシ掲載価格と店頭表示価格」という例えが用いられるとおり、「店側は、チラシに掲載した価格で商品を販売する法律上の義務を負うものでなく、新たな価格を設定することができ、これに客が同意すれば売買契約が成立する」というのと同じ構図だ。
古い事例ではあるが、「求人は労働契約申込みの誘引(ママ)であり、求人票はそのための文書であるから(中略)本来そのまま最終の契約条項になることを予定するものでない」(東京高判S58.12.19)と、裁判所もこの立場に立っている。
しかし、「違法ではない」ということは、必ずしも「問題ない」ということを意味しない。
上に挙げた裁判例の判決文でも、裁判所は「求人者はみだりに求人票記載の見込額を著しく下回る額で賃金を確定すべきでないことは、信義則からみて明らかである」とも明言しており、また、この事案(八洲測量事件)では「いわゆる石油ショックによる経済上の変動により求人票に記載した条件で雇用できなくなった」という特殊事情も斟酌されたことを読み取る必要があるだろう。
また、「チラシ掲載価格と店頭表示価格」の例えでイメージできるように、特段の事情なくこれらに差を設けるのは、客(従業員)との信頼関係を損ないかねない。目先のわずかな利益に惑わされて大きなマイナスを被る要因を作ってしまうのは、得策とは言えまい。
結論として、やはり、求人票等と同じ条件で雇い入れるのを原則と考えるべきだろう。そして、やむを得ず条件を変更しなければならない事態となったら、雇い入れ前に、本人にその旨を説明し、納得のうえで入社してもらえるよう、努めたい。
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