多くの会社では、就業規則をはじめとする諸規程の下位に、「内規」を設け、規程に記載しきれない細かな運用ルールを定めている。そして、内規は、そうした性格ゆえに、頻繁に見直されるのが一般的だ。
ところで、その内規の変更が労働者にとって不利益になる場合には、労働契約法第8条または第10条の適用を受けるのだろうか。言い換えるなら、そもそも「内規」は「労働契約」なのか、という疑問について考えてみたい。
さて、内規について言及する前に、「就業規則」が労働契約になりうる要件を整理しておくこととする。
就業規則は、会社が一方的に定めるものではあるが、合理的な労働条件が定められ、かつ、それを労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による(労働契約法第7条)とされている。
これを踏まえれば、労働条件(労働基準法第89条各号に列挙された項目)を定めたものであって、従業員に周知している「社内ルール」があるならば、それは、その会社内でどのように呼称されていたとしても、実質的に「就業規則」の一部であって、「労働契約」を構成すると言える(参考裁判例:東京地判H28.5.19)。
したがって、そのような内規の内容を労働者に不利益に変更するなら、労働契約法第8条または第10条に定められた手順を踏まなければならない。
逆に、従業員に周知していない内規は、労働契約として労使双方を拘束することはない。裁判例を見ても、休職後の復職基準について定めた内規が人事部の内部資料として作成されたものに過ぎないとした事例(東京地判H26.11.26)、年俸の内訳に諸手当や賞与が含まれることについては内規で定められたもので従業員への説明はなされていないとした事例(東京地判H27.10.30)など、裁判所は「周知」を判断材料にしていることが窺える。
ちなみに、内規である旨を明記して従業員に開示されたルールが労働契約の内容とならないとした裁判例(大阪高判H27.9.29)もあるにはあるが、他の事情も斟酌されたうえでの判決なので、この部分だけを抜き出して鵜呑みにするのは危険だろう。
結論として、その内規が従業員に周知されていなければ、労働契約法の適用を受けることはなく、会社が一方的に(ただし労働協約や就業規則に反しない範囲で)変更することが可能だ。
加えて言うなら、内規が経営陣や人事部局内における“運用ルール”であるなら、それを従業員に周知するべきではないとすら言えよう。
※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
(クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
↓