賞与支給に際して人事考課を実施した会社も多いだろう。
ところで、人事考課にあたって考課者(一般には直属の上司)が陥りやすい心理傾向として、以下のようなものがある。
(1) 寛大化傾向
部下をひいき目に見て、全体的に評価が甘くなる。
[例] 「自分の部下だから優秀なはずだ」
(2) 厳格化傾向
部下が頼りなく見え(または自身の若い頃と比較して)厳しく評価。
[例] 「自分の若い頃はこのくらいやって当然だった」
(3) 中心化傾向
部下を観察できていないため(または反感を恐れて)無難な評価に。
[例] 「みんな真面目にやっている」
(4) 対比誤差
考課者自身との対比によって評価してしまう。
[例] 「数字が苦手な上司が数字に強い部下を高評価」
(5) ハロー効果
特定の要素から形成される先入観によって全体を評価してしまう。
[例] 「企画書が体裁よく作られているから内容もしっかりしているように見える」
(6) 論理的誤謬
事実を見ずに考課者自ら作った論理によって評価してしまう。
[例] 「サラ金から多額の借金をしているから仕事もずさんだ」
(7) 期末効果(近時点効果)
直近の行動や成果をもって評価期間全体を評価。
[例] 「最近の大失敗により以前の成功事例も台無し」
※なお、「逆算化傾向」(評価に基づく賞与支給額や昇格等を念頭においた評価をしがち)を挙げる識者もいるが、従業員の処遇を決める材料たることも人事考課の目的であることを鑑みれば、むしろ考慮されるべき事項と言えるので、ここでは除外しておく。
以下、これらの心理傾向を補正するための方策について、例示してみたい。
まず、(1)~(3)に関しては、「相対評価」を導入すれば容易に解決する。すなわち、部下全員を“順位付け”するという方法だ。
ただ、相対評価には、「“甘辛”を補正しやすい」というメリットがある一方、「被考課者の能力開発(これも人事考課の目的の一つ)に活用しにくい」などのデメリットもあることは承知しておかなければならない。
(4)~(6)に関しては、「考課表」を評価項目ごとに記入するようにすることで一定程度は改善されよう。
(7)に関しても、「考課表」を工夫して、例えば月別に評価したものを集計するような形式にすれば、考課者の負担は重くなるものの、効果を薄めることは可能だ。
しかし、これらの方策を講じたとしても、やはり考課者の癖は出てしまう。そもそも、「人が人を評価する」のだから、いくら補正しようとしても、自ずと限界はある。
とは言え、少なくとも考課者自身はこういった心理傾向を自覚したうえで人事考課に取り組む必要があり、そのためにも、事前に考課者教育を実施しておきたいところだ。
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