今(令和3年1月23日現在)は11都府県に緊急事態宣言が出されていることもあって、また、緊急事態宣言発出と関係なく急激な経済活動の縮小に伴って、多くの会社で労働時間(特に残業時間)が短縮されている。
ところで、会社が一方的に残業を減らすのは、法的に問題ないのだろうか。
なぜ突然こんな問いを呈したかというと、労働時間が短くなるのは労使双方にとって望ましいことと思いきや、一部の労働者からは「残業が減る」=「収入が減る」という不満の声も上がっているからだ。
結論を先に言うと、会社が一方的に残業を減らすこと自体は、法的に問題ない。
そもそも残業は、会社が命じるものであって、残業させるもさせないも会社が決めることだからだ。
しかし、意外に思われるかも知れないが、やらなかった残業について残業代を支払わないことが問題となる場合もあるので、注意を要する。
典型的なのは「月〇時間の残業があるものとして月額〇万円を支払う」といった「固定残業代」(「定額残業代」「みなし残業代」とも呼ばれる)を組んでいるケースだ。 この契約では「残業時間の多寡にかかわらず一定額の残業代を支払う」と約束しているのだから、残業を減らしても固定残業代を減額することはできない。
また、労使ともに「残業するのが当然」という意識を持つ職場では、労働契約(雇用契約書や就業規則等)に明文規定が無くても、そのような労使慣行があったとみなされる可能性がある(民法第92条)。 そうなると、会社(債権者)は残業を減らすこと(債務の免除)はできても賃金支払い(反対給付の履行)を拒むことはできない(民法第536条第2項)。
これらのケースにおいて、働かなかった分の残業代を支払わないこととするには、現状に即した内容での労働契約を締結し直すしか無い。
基本的には、新たな労働条件での雇用契約書を、該当者全員と個別に交わすことを考えたい。 それが、最も確実で、後々のトラブルにもなりにくいからだ。
労働契約法第10条は就業規則の変更により会社が一方的に労働条件を変更することを認めてはいるが、これを適用するにはハードルが高い。
また、どうであれ従業員に対して丁寧に説明しなければならないのは同じなので、会社の規模にもよるところではあるが、やはり個別同意を得るのを第一に考え、就業規則の変更は「個別同意した労働条件の再確認」または「一部の者が同意しない場合の最後の手段」くらいに認識しておくべきだろう。
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典型的なのは「月〇時間の残業があるものとして月額〇万円を支払う」といった「固定残業代」(「定額残業代」「みなし残業代」とも呼ばれる)を組んでいるケースだ。 この契約では「残業時間の多寡にかかわらず一定額の残業代を支払う」と約束しているのだから、残業を減らしても固定残業代を減額することはできない。
また、労使ともに「残業するのが当然」という意識を持つ職場では、労働契約(雇用契約書や就業規則等)に明文規定が無くても、そのような労使慣行があったとみなされる可能性がある(民法第92条)。 そうなると、会社(債権者)は残業を減らすこと(債務の免除)はできても賃金支払い(反対給付の履行)を拒むことはできない(民法第536条第2項)。
これらのケースにおいて、働かなかった分の残業代を支払わないこととするには、現状に即した内容での労働契約を締結し直すしか無い。
基本的には、新たな労働条件での雇用契約書を、該当者全員と個別に交わすことを考えたい。 それが、最も確実で、後々のトラブルにもなりにくいからだ。
労働契約法第10条は就業規則の変更により会社が一方的に労働条件を変更することを認めてはいるが、これを適用するにはハードルが高い。
また、どうであれ従業員に対して丁寧に説明しなければならないのは同じなので、会社の規模にもよるところではあるが、やはり個別同意を得るのを第一に考え、就業規則の変更は「個別同意した労働条件の再確認」または「一部の者が同意しない場合の最後の手段」くらいに認識しておくべきだろう。
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