ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

派遣先責任者の選任義務とその活用について

2022-12-13 10:24:48 | 労務情報

 派遣労働者を受け入れる事業所(派遣労働者の数と直接雇用する労働者の数との合計が5人以下の事業所を除く)は、「派遣先責任者」を選任して次の事項を行わせなければならない(労働者派遣法第41条、労働者派遣法施行規則第34条第1号ただし書き)。
  1.派遣労働者を指揮命令する者および関係者に、労働者派遣法等・労働者派遣契約の定め・派遣先への通知について周知すること
  2.派遣期間の変更について派遣元へ通知すること
  3.派遣先における均衡待遇の確保に関すること
  4.派遣先管理台帳の作成・保存および派遣元への通知
  5.派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理
  6.派遣労働者の安全・衛生に関し、当該事業所の管理者および派遣元との連絡調整
  7.その他派遣元との連絡調整

 すなわち、派遣先責任者の役割は、端的に言ってしまえば「派遣労働者が働きやすい環境を作ること」だ。
 そして、それは「生産性の向上」という形で会社に返ってくる。
 逆に、もし派遣先責任者がその職責を果たさなければ、派遣労働者が働きにくくなりかねず、そのことが職場全体の就労意欲に、ひいては経営にも悪影響を及ぼすことも懸念されうる。

 一方で、派遣先責任者への就任により「その者自身のスキルが向上する」という副産物もある。
 上に列挙した職務は、管理職として部下を管理することに通じるので、管理職候補者に経験を積ませる目的で派遣先責任者に就かせるのも、人材育成の観点から一考に値するだろう。

 厚生労働省が示した「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号、令和2年厚生労働省告示第346号)は、派遣先責任者には「労働関係法令に関する知識を有する」「人事労務管理等の専門的知識や経験を有する」「派遣労働者の就業に係る一定の権限を有する」といった者を選任するよう“努める”ことを求めている。
 もちろん知識・経験・権限の全く無い者を派遣先責任者に就かせるべきではないが、その職務を遂行する中でこれらを高めていくことを会社が企図するのも、悪くなかろう。 現在のところは受講を義務づけられていない「派遣先責任者講習」を受講させるのも一策だ。

 いずれにしても、派遣先責任者を「義務づけられているから選任する」というスタンスで形式的に置くだけなのは、実にもったいない。 選任が義務づけられていればこそ、会社はそれを有意義に活用するべきだろう。


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