ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

反復更新している有期労働契約に関する注意点

2025-02-03 08:59:37 | 労務情報

 有期労働契約(雇用期間の定めのある契約)が通算5年を超えることになった場合は、労働者の申し出により無期契約に転換する(労働契約法第18条)。 これは労働者が申し出るだけで無期契約化するのであって、相手方当事者(会社)の同意は不要だ。 また、例えば3年契約なら1回更新すれば5年を超えるので4年目には無期化を申し出ることができる。
 この「無期契約化」に関しては、平成24年の法改正で新設された概念であり、当時は経営を揺るがしかねない大問題として取り上げられたのを記憶されている向きも多いだろう。 しかし、同時に法文化された「雇い止め法理」(同法第19条)に関しては、既に確立していた判例(最一判S49.7.22、最一判S61.12.4)がそのまま制定法化された(周知期間も設けられず公布と同時に施行された)ためか、さほど話題にならなかった感がある。
 今回は、そちらの「雇い止め法理」について考えてみたい。

 「雇い止め」とは、有期労働契約を更新せずに終了させることを言い、「雇い止め法理」とは、労働契約法第19条が、「有期契約が反復更新により無期契約と実質的に異ならない状態になっている場合(第1号)、または労働者が期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合(第2号)には、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない雇い止めは認めない」と定める根底にある考え方だ。
 そして、実務上は、無期契約化よりもよほど神経を遣わなければならない。

 特に会社側が注意しなければならないのは第2号だ。 有期契約の更新を繰り返しているケースで、労働者が次の契約更新を“期待”したなら(期待することに合理性があるなら)、5年を経過しなくても実質的に無期契約化したのと同義になるからだ。

 では、何回更新したら労働者が契約更新を期待することに合理性が認められるのか。
 これについて裁判所の判断は事案によってまちまちだが、一般的には「2回更新したら3回目以降の更新を期待する」と考えるのが自然だ。 また、もしも雇い入れの際に面接した者(経営者であれ人事担当者であれ)が例えば「ずっと働いてもらいたいが形式上1年契約にしておく」などと言ったとしたら、その時点で(一度も更新していなくても)「期待させた」ことになりうる。

 もっとも、反復更新している契約であっても、それなりの合理性・相当性があれば雇い止めは可能であるのだし、期中・期末を問わず退職を勧奨することは禁じられていない。 また、最後の契約締結時に「この契約を最終とし次期契約は締結しない」といった“不更新条項”を記載しておくことも有効な一策と言える。
 ただ、これらはいずれも、訴訟において会社の言い分が認められるとは限らないことは覚悟しておく必要がある。 その意味でも、雇い止めに際しては、本人にその理由を丁寧に説明して納得してもらうように努めるべきと言えよう。


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