自社の従業員を個人事業主として独立させる動きが高まっている。 モチベーションアップ策の一つとして「独立支援制度」を設ける会社や、また、高年齢者の就業機会確保措置の一環として検討している会社もある。
わが国には古くから「のれん分け」と呼ばれる慣習が根付いてきたが、それは、言ってみれば“競合”を作り出すようなものであった。 その点、近年の独立支援制度等は、性格が異なり、それまでは従業員に命じていた職務を、請負契約により履行させるスタイルに変えるものであって、“競合”ではなく“下請け”を作るようなものと言える。
ところで、こうした独立支援制度等は、労使双方にメリットもデメリットももたらすが、中でも、個人事業主になる者にとっては「労災保険の対象から外れること」が大きなデメリットとして挙げられよう。 そして、会社が独立を勧めても当該従業員がそれを理由に難色を示すこともある。
そこで、国が管掌する「労災保険の第2種特別加入」を紹介しておきたい。
現在は次の9業務が対象となっており、いずれかに該当すれば、都道府県労働局長から承認を受けた「特別加入団体」を経由して加入することができる。 ちなみに、事故が起きたときの給付手続きにおいては、その特別加入団体を“(形式上の)雇い主”として請求することになる。
(1) 個人タクシー業者、個人貨物運送業者(自転車等を使用するものも含む)
(2) 建設業の一人親方
(3) 漁船による自営漁業者
(4) 林業の一人親方等
(5) 医薬品等の配置販売業者
(6) 再生資源取扱業者
(7) 船員法第1条に規定する船員
(8) 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師
(9) 創業支援等措置に基づく高年齢者
この制度は俗に「一人親方の労災保険」と称されるが、9業種の中には「一人親方」のイメージから外れるものもあるので、先入観で判断しないよう、気を付けたい。
もっとも、特別加入は強制ではないし、保険料の負担も生じる話なので、加入するもしないも任意ではある。
しかし、個人事業主として何らかの保険を掛けるつもりなら、まず政府が管掌する保険を掛けたうえで、不足分を民間保険でカバーするのが賢明と言えるだろう。
一方、業務の外注化を進めたい会社側としては、このような“独立のデメリット”を軽減する諸制度について、該当者に対し丁寧に説明して、理解を求めるように努めたいところだ。
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