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【「捩花(ネジバナ)」】
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・・・既に曙の色を払い落した富士は、 3分の2を雪に包まれた鋭敏な美しさで、 青空を刳り抜いていた。 明晰過ぎるほど明晰に良く見えた。 雪の肌は微妙で敏感な起伏の緊張に満ち、 少しも脂肪のない筋肉の細かい 端正な配置を思わせた。 (中略) 1点の雲もなく、石を投げれば石の当たる 際どい音が響いて来そうな 硬い青空 である。 【三島由紀夫作 「暁の海」 ~ 『豊饒の海』 第3巻】 |
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梅雨の晴れ間3日目は、快晴となりました。
おまけに梅雨、しかも7月とは思えない程の爽やかな気候。
気温は、かなり高いのですが湿度がありません。
昨日も記しましたが、
淡い水色の空は包み込むような優しさ。
「青い陶器のような空」 と表現したのは吉屋信子ですが、
期せずして三島由紀夫も今日の引用文の如く、
同様の表現をしていますね。
「硬い青空」 と言うと私などは
咄嗟(とっさ)に冬日和の空を連想したものです。
季節は様々で吉屋信子が夏、
三島由紀夫は春。沈丁花の咲く季節です。
これからは意識して空を眺める事に致しましょう。
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【風を待つ花 「赤花夕化粧(アカバナユウゲショウ)」】
【捩花】
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誰もが認めるところですが、
「かそけき花」 の
イメージはありませんね。
可憐なピンクの野の花には
後塵(こうじん)を
排する事でしょう。
何せ薔薇は存在感、
たっぷりですものね。
尤もそこは花の女王。
憂愁の薔薇もあるには
ありますが。
ところで今日の幸せ。
今年初めて裏庭に「捩花」
を発見。大好きな花です。
この花は孤高のイメージ。
決して群れないで一定の距離を
保ち咲く事にあるのかも
知れません。誇り高き野の花。
そして 「赤花夕化粧」。
もうかなり長い事咲いていますね。
風に揺れているその姿は、見るからに儚(はかな)げで。
風の似合う花です。「風待草」 と命名しましょうか・・。