午後の予約外来は空いている。
年に数回の定期検診の
今日はCT検査の日で、
朝食を7:20にとった後、昼食抜きで来るようにと指示を受けていたため、
検査前に空腹感がピークに達した。
そのせいだろうか、
いつもなら造影剤の投与と同時に
身体がカーッと熱くなって不快感極まりない感覚が…
何故か、
あまり感じられなかった。
0.8ミリと看護師が言っていた薬剤の量は前回と一緒だと思うのだが、
あの、身体の臓器の一部が急に熱を帯びていく時の、
何とも言えない息苦しさが感じられない。
投与と同時に一瞬熱くなったような気もしたが、
あっという間に冷めてしまったようだ…
これは一体、どうしたことだろう?
(慣れたか?)
それとも空腹感が強すぎて、
造影剤(ヨード剤)でさえ、
身体が“食べ物”として受け入れたか?
こんなに楽な検査は初めてだ…
「今日は、あまり熱さを感じませんでした」
と伝えると
看護師は、
「少しずつ薬剤を入れたからかもしれませんね」
と笑顔で答えた。
CT室を出ると、
診察時間まで、まだ1時間はある。
さて、コレでようやく食べられるゾ、
と
病院玄関ロビー脇のコーヒーショップに立ち寄って、
スモークチキンと半熟卵のミラノサンドに温かいブレンドコーヒーで
昼食をとる…
1つ置きに間隔が設けられたテーブルでミラノサンドをパクついていると
4、5m離れた左手の席から怒号が飛んできた。
「両手で食べろよ〜っ!」
カウンター内にいた女性スタッフが驚いて振り向いている。
視線の先を見れば、
首に包帯を巻いた70代後半の痩せた男性と
付き添いだと思われる高齢女性、
その横に声の主と思しき40代半ばの?息子らしき中年男性が座っていた。
「痛かねえよおっ!同情なんかしねえからなっ!」
見れば小柄な高齢男性は手を震わせながら、
困り果てたような顔で飲み物を持とうとしているところだ。
小さな声で何か言おうとしているようだが、聞こえない。
「帯状疱疹なんか、たいしたことねぇんだよおっ!」
と言う息子の声が、そこら中に響いている。
( そんな事ないよ!アンタあの痛みを知らないから、そんな事言えるんだよ!)
と私の心の声が叫ぶ。
だんだん腹が立ってきたので、
食べ終わると同時にコーヒーショップを出て、
診察室前の待合いコーナーに移動した。
(あんな言い方は、ないよなぁ…)
怒鳴られる度に、ますます小さくなっていたオジサンが気の毒だ。
診察は、
早く行った分、30分も早く終わった。
「血液も前回より数値がよくなっていて全く問題ないし、CT検査も異常なしですよ」
と言われ、
「最近、保護犬を飼い始めて一緒に散歩しているので、気分が良いんです!」
と、答えると
「よかったですね!」
と、若い主治医はにっこり笑った。
Hal効果は絶大だ。