『バニョール銀座で』
1月8日
朝から雪。
午前中、歩いて近所で開かれているマルシェ(市場)に行く。
寒さのせいか、いつもより出店数が少ないとマダムが言っていたが、広場全体が活気があって
楽しそうに人々が行き来している。
(これが噂にきくマルシェかぁ・・)
衣料品から、食料品、生活雑貨などありとあらゆるものが所狭しと並べられ、観ているだけで
楽しい。
「ユミ、見てよ。この皮のコート20ユーロよ!」
マダムが手に取ったベージュのムートンのコートが日本円にして約2500円・・・や、やすいっ。
サイズが合えば本当にお買い得。
でも、よ~く見ると袖が長いんだなぁ・・フランスサイズは。
実は、私は皮のコートでは一度失敗している。
大学時代、世話になった大阪フィルのK講師がドイツに旅行に行った時、
皮のコートを買ってきてもらって当時の値段で3万円払ったのだが・・・
肩幅が丁度だったのにもかかわらず袖が長すぎて結局、袖口が邪魔で何度も着られなかった。
いっそのこと切ろうか、とも思ったがデザインが変わるし、バランスがおかしくなるのでやめた。
着なくなって1年後に再び出してみたときは、カビが生えて所々変色してしまっていたので、たぶんゴミに出してしまったのではないかと思う。
その3万円のコートからすれば破格の値段だ。
皮のコートだけではない。
石畳の広場のワゴンに無造作に積み上げられた衣類は、どれもこれも本当に安い。
「パエリア・・まだあるかしら?」
マダムが買って帰ってお昼にたべようね、と言っていたパエリアは屋台のようなところで売られているという。
広場には幾つか、パエリアの屋台があって、それぞれ味も違うらしいのだが
近くの屋台をのぞくと鉄板の中には、黄色のサフラン色のライスと赤茶色のエビが少しだけ・・・。
もうほとんど残っていない状態だった。
仕方が無い、他の店に行ってみよう。
広場中央のオジサンのやっている屋台のパエリアが一番味が良いのだという。
時刻はもう昼に近いせいか、そろそろ店じまいを始めている屋台も多いようだ。
急いで行ってみると、屋台には誰もいない。
オジサンは何処に行ったのだろう・・。
仕方がないので、そこら辺を少し散歩してから、また後で寄ってみよう、ということに・・。
バニョール銀座はあっと言う間に終わるとマダムが言っていたが、それは本当だった。
入り口のクレープ屋さんでシトロンクレープを買ってもらう。
少し酸味がきいた焼きたてのクレープは、歯ざわりが良くて、サクサクしていて本当に美味しい。
次に立ち寄ったのは、マダムの愛息子コリー御用達の靴屋さん。
人懐っこそうな、初老の夫婦がやっている店だ。
10畳くらいの狭いスペースの店内に有名スポーツメーカーの靴が並べられている。
まるで、大阪にいた頃よく通った東三国商店街の雰囲気だ。
ただ一つ違うのは、
バニョール銀座商店街(勝手に名前をつけた)の店はウナギの寝床式で、間口は狭く奥に長い。
一階が店舗で二階が住居という作りが多いようだ。
建物自体は、石造りやレンガ造りだが店舗は外観や内装に手を加え、
近代的に見せてはいるが、ちょっと店の後ろに回ると石の壁が剥き出しになっているところもあって、面白い。
店に入るなりマダムは店主夫妻にフランス語で何やら言ったかと思うと、2人はマダムに体を寄せて頬にチュッ、チュッ、チュッと3回、キスをした。
そして、横にいた私を「日本から来た友人です」と紹介してくれたかと思うと、即座に店主のオジサンは私を抱き寄せ、頬にチュッ、チュッ、チュッと3回キスをしてくれたのだ。
この辺りではこのキスの風習をビスという。
私の場合はマダムから、予め聞いていたのでそれほど戸惑わなかったが、
初めてだときっと、日本人なら戸惑う人も多いことだろう。
(しっかし、バニョールって・・・若くてハンサムな男性はいないみたい。そんな人がいれば何回もビスしたいけれど・・ああ、オジサンで残念。)
・・・と、不謹慎な考えが私の脳裏を過ぎったのは言うまでもない。
さて、先ほどのパエリアはどうなった?
一通りバニョール銀座を歩いて、一番の目的であるパエリアを買いに、来た道を引き返し
マルシェの屋台に帰ってみると・・時すでに遅し、オジサンは店じまいをしている最中。
思わず駆け寄って交渉するマダムであったが、すでにパエリアは売り切れ。
その時、私は意外な事実を知る。
「パエリアの屋台のオジサン」とマダムが言うものだから、
太ったケンタッキーの看板オジサンのような人を想像していたのだが、
実はものすっご~く素適なオジサマだったのだ。
渋めのルックスは・・ブルース・ウィルスを少し太らせた感じだろうか。
マルシェは午前中で閉店。
パエリアを買い損ねたマダムは、気を取り直して「アンテ・マルシェ」でバケットを
買って帰ることに・・。
パンコーナーの横でこの辺では珍しいジュースの自販機を発見。
話には聞いていたが、外に自販機が置いてあるところはないというのは本当のようだ。
ここでも、焼きたてのバケットを買って、かじりながら帰る。
これも外はカリカリ、中はしっとりでほっぺたが落ちそうなくらい美味しい。
午後はマダムのアパルトメントで、「アメリ」を観て過ごす。
夕方、お土産を買いにまた「アンテ・マルシェ」へ・・・。
カートに愛犬を乗せて買い物をしている中年夫婦を発見。
よほど犬が可愛いとみえて、時々ご主人らしき男性が、犬に頬ずりをしている。
犬の顔を見ると「黒のブルドック」・・・けっして器量が良いわけではないが、
不思議なことに犬の表情まで、ゆったりとしていて満足げだ。
これだけ愛されていれば、飼い主にも従順になる筈だと、心の中で納得。
買い物を済ませてマダムの家に帰った時は、もうすっかり暗くなっていた。
夕飯は、コリー考案のオリジナル料理「ポテトのポテトソースかけ&人参のグラッセ」
マダムお得意のサラダリヨネーズ、(半熟目玉とラルドン・・刻みベーコンが乗っかっている)
メインディッシュがロール白菜、飲み物はパナシェ。
そして焼きたてバゲット。
コリーの料理のセンスはなかなかのもの・・・美味しい料理を食べてまたまたお腹がいっぱい。
ここへきて体重が何キロか増えたに違いない。
夜、UNOで遊ぶ。
私はボロ負け。
1月8日
朝から雪。
午前中、歩いて近所で開かれているマルシェ(市場)に行く。
寒さのせいか、いつもより出店数が少ないとマダムが言っていたが、広場全体が活気があって
楽しそうに人々が行き来している。
(これが噂にきくマルシェかぁ・・)
衣料品から、食料品、生活雑貨などありとあらゆるものが所狭しと並べられ、観ているだけで
楽しい。
「ユミ、見てよ。この皮のコート20ユーロよ!」
マダムが手に取ったベージュのムートンのコートが日本円にして約2500円・・・や、やすいっ。
サイズが合えば本当にお買い得。
でも、よ~く見ると袖が長いんだなぁ・・フランスサイズは。
実は、私は皮のコートでは一度失敗している。
大学時代、世話になった大阪フィルのK講師がドイツに旅行に行った時、
皮のコートを買ってきてもらって当時の値段で3万円払ったのだが・・・
肩幅が丁度だったのにもかかわらず袖が長すぎて結局、袖口が邪魔で何度も着られなかった。
いっそのこと切ろうか、とも思ったがデザインが変わるし、バランスがおかしくなるのでやめた。
着なくなって1年後に再び出してみたときは、カビが生えて所々変色してしまっていたので、たぶんゴミに出してしまったのではないかと思う。
その3万円のコートからすれば破格の値段だ。
皮のコートだけではない。
石畳の広場のワゴンに無造作に積み上げられた衣類は、どれもこれも本当に安い。
「パエリア・・まだあるかしら?」
マダムが買って帰ってお昼にたべようね、と言っていたパエリアは屋台のようなところで売られているという。
広場には幾つか、パエリアの屋台があって、それぞれ味も違うらしいのだが
近くの屋台をのぞくと鉄板の中には、黄色のサフラン色のライスと赤茶色のエビが少しだけ・・・。
もうほとんど残っていない状態だった。
仕方が無い、他の店に行ってみよう。
広場中央のオジサンのやっている屋台のパエリアが一番味が良いのだという。
時刻はもう昼に近いせいか、そろそろ店じまいを始めている屋台も多いようだ。
急いで行ってみると、屋台には誰もいない。
オジサンは何処に行ったのだろう・・。
仕方がないので、そこら辺を少し散歩してから、また後で寄ってみよう、ということに・・。
バニョール銀座はあっと言う間に終わるとマダムが言っていたが、それは本当だった。
入り口のクレープ屋さんでシトロンクレープを買ってもらう。
少し酸味がきいた焼きたてのクレープは、歯ざわりが良くて、サクサクしていて本当に美味しい。
次に立ち寄ったのは、マダムの愛息子コリー御用達の靴屋さん。
人懐っこそうな、初老の夫婦がやっている店だ。
10畳くらいの狭いスペースの店内に有名スポーツメーカーの靴が並べられている。
まるで、大阪にいた頃よく通った東三国商店街の雰囲気だ。
ただ一つ違うのは、
バニョール銀座商店街(勝手に名前をつけた)の店はウナギの寝床式で、間口は狭く奥に長い。
一階が店舗で二階が住居という作りが多いようだ。
建物自体は、石造りやレンガ造りだが店舗は外観や内装に手を加え、
近代的に見せてはいるが、ちょっと店の後ろに回ると石の壁が剥き出しになっているところもあって、面白い。
店に入るなりマダムは店主夫妻にフランス語で何やら言ったかと思うと、2人はマダムに体を寄せて頬にチュッ、チュッ、チュッと3回、キスをした。
そして、横にいた私を「日本から来た友人です」と紹介してくれたかと思うと、即座に店主のオジサンは私を抱き寄せ、頬にチュッ、チュッ、チュッと3回キスをしてくれたのだ。
この辺りではこのキスの風習をビスという。
私の場合はマダムから、予め聞いていたのでそれほど戸惑わなかったが、
初めてだときっと、日本人なら戸惑う人も多いことだろう。
(しっかし、バニョールって・・・若くてハンサムな男性はいないみたい。そんな人がいれば何回もビスしたいけれど・・ああ、オジサンで残念。)
・・・と、不謹慎な考えが私の脳裏を過ぎったのは言うまでもない。
さて、先ほどのパエリアはどうなった?
一通りバニョール銀座を歩いて、一番の目的であるパエリアを買いに、来た道を引き返し
マルシェの屋台に帰ってみると・・時すでに遅し、オジサンは店じまいをしている最中。
思わず駆け寄って交渉するマダムであったが、すでにパエリアは売り切れ。
その時、私は意外な事実を知る。
「パエリアの屋台のオジサン」とマダムが言うものだから、
太ったケンタッキーの看板オジサンのような人を想像していたのだが、
実はものすっご~く素適なオジサマだったのだ。
渋めのルックスは・・ブルース・ウィルスを少し太らせた感じだろうか。
マルシェは午前中で閉店。
パエリアを買い損ねたマダムは、気を取り直して「アンテ・マルシェ」でバケットを
買って帰ることに・・。
パンコーナーの横でこの辺では珍しいジュースの自販機を発見。
話には聞いていたが、外に自販機が置いてあるところはないというのは本当のようだ。
ここでも、焼きたてのバケットを買って、かじりながら帰る。
これも外はカリカリ、中はしっとりでほっぺたが落ちそうなくらい美味しい。
午後はマダムのアパルトメントで、「アメリ」を観て過ごす。
夕方、お土産を買いにまた「アンテ・マルシェ」へ・・・。
カートに愛犬を乗せて買い物をしている中年夫婦を発見。
よほど犬が可愛いとみえて、時々ご主人らしき男性が、犬に頬ずりをしている。
犬の顔を見ると「黒のブルドック」・・・けっして器量が良いわけではないが、
不思議なことに犬の表情まで、ゆったりとしていて満足げだ。
これだけ愛されていれば、飼い主にも従順になる筈だと、心の中で納得。
買い物を済ませてマダムの家に帰った時は、もうすっかり暗くなっていた。
夕飯は、コリー考案のオリジナル料理「ポテトのポテトソースかけ&人参のグラッセ」
マダムお得意のサラダリヨネーズ、(半熟目玉とラルドン・・刻みベーコンが乗っかっている)
メインディッシュがロール白菜、飲み物はパナシェ。
そして焼きたてバゲット。
コリーの料理のセンスはなかなかのもの・・・美味しい料理を食べてまたまたお腹がいっぱい。
ここへきて体重が何キロか増えたに違いない。
夜、UNOで遊ぶ。
私はボロ負け。
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