『ホテル』が舞台の映画といえば、
『有頂天ホテル』
『本能寺ホテル』などを思い浮かべるけれど、
どの作品も、ワクワクしてくるタイトルで、
この『マスカレードホテル』も例外ではない。
映画の中で実際に使われているホテル名は、
『ホテル・コルテシア・トウキョウ』なのに
“マスカレード”(仮面)ホテル』をタイトルにしたところに、
この映画の言わんとしている奥深いテーマが垣間見える…。
そうだ、
高級ホテルに出入りする人々は仮面を被っている。
私も仕事で都内の有名ホテルを訪れることはあるが、
ロビーで人間ウォッチングをしていると、
仮面をかぶって訪れる客から、
現実の生活を想像するのは難しい。
映画を観ながら思い出した事がある…
いつだったか、
ずいぶん前になるが、
私が関西にいた頃、
“一流”で知られる大阪の某ホテルのロビーで顔見知りの女性に偶然会った事があった。
彼女は、たぶん40代半ばだっただろうか…
当時、私が所属していた音楽団体では、
いつも目立っている派手な存在だった。
ロビーでは、
大学生くらいのスラリとした男子と一緒だったので、
次に会ったときに
「ご一緒にいたのは息子さん?」
と訊くと、
「アラ、いや〜ね、ツバメに決まってるでしょ?」
と、
全く悪びれた様子もなくシナを作った彼女の、
艶かしい真っ赤な唇から溢れた意味深な笑いが忘れられない。
(ー ー;)
「お友だちとランチするのよ」
と言って出かけるにはピッタリの場所でもある一流ホテルは、
有閑マダムのアバンチュールには恰好の場所でもあるのだ。
映画「マスカレードホテル」でも、
妻に隠れて若い愛人を部屋に呼ぶ中年男性客の浮気の現場や、
遥か昔の怨みを根に持つ、見た目も陰険な男性客の執拗なハラスメントや言いがかり、
常識の通用しないクレーマーと化した客が魑魅魍魎のように蠢く姿が描かれているが、
みんな、事件を起こしそうな怪しい人間に見えてくる。
それが、ホテルマンに扮して潜入捜査をする新田刑事(キムタク)を混乱させるのだ…。
で、最後の最後になって
ようやく犯人の足を掴むのだが、
それが部屋に備えられたペイパーウェイトの置き方などの“匂わせ”もあり、
敢えて説明を控えた、さりげなく憎い演出もある。
で、
もう一つ、エンドタイトルで気になった事があった。
明石家さんま(友情出演)
とあったのだが、
どこで出ていたのだろう…
全く気がつかなかった。
仮面でもつけていたのだろうか?
東野圭吾氏の原作。
ハチャトリアンの『仮面舞踏会』風のワルツが、冒頭のわさわさした場面で流れていたが、
この手の映画に有りがちなイメージ。
もう少し、軽めのBGMでも良いような気がした。
日本アカデミー賞で肩出しドレス姿も講評だった長澤まさみさんは、
やはりスタイルバツグンだ。