東武鉄道は1983年より地下鉄有楽町線直通用の9000系をベースにした地上専用通勤車として10000系を登場させましたが、1988年からの増備車は正面形状を8000系修繕車に類似した形態とし、凹凸の少ないビードプレス車体やボルスタレス台車の採用など各部に設計変更を実施した10030系に移行しました。主に伊勢崎線・日光線の末端区間や野田線で当時運用されていた旧性能車の更新車で非冷房の3000系列置き換えの為に導入され、1989年からは東上線にも配置されるようになり自社線内の主力車両になりました。2013年からは8000系置き換えの為に伊勢崎線系統から野田線への転属も発生しており、系列内ではバリエーションも多く存在し趣味的な興味も尽きないグループです。
1989年に登場した10両固定編成の11031F。運用に柔軟性を持たせる為に本線・東上線共に6両と4両で導入していましたが、当編成と11032Fの2本は先頭車が中間に入らない10両貫通とされ収容力が向上しました。なおもう1本の11032Fはリニューアル工事とVVVFインバータ制御化を施工され、大きく姿を変えています。
同じく東上線所属の11634F(後部4両11455F)。1990年の新製導入以来、一貫して東上線で運用される編成です。11032F以降は再び6両と4両が中心になり、当編成は6両編成でしたが2012年10月に11455Fと組み事実上10両固定編成とされ、中間に入る先頭車は前照灯や運転台機器撤去、転落防止幌の設置を行い付随車化されています。
現在のところ東上線所属車のみで見られる中間に封じ込められた元先頭車。小田急電鉄や京王電鉄は6両+4両の10両貫通化に際して前頭部を切断し新たな車端部を接合する大工事を行なっていますが、東武鉄道では最低限の改造に止まっている他、車両番号の末尾を特に揃えていないなど方針の違いがよく現れている部分です。
車内設備は9000系・10000系(更新前)と基本的に共通ですが、客用扉内側はステンレス無塗装から化粧板仕上げになり印象が変化しました。写真は1990年までに製造された30番台車で、1991年の増備車では吊り手が三角形になり、1992年度からの50番台では補助送風装置(ラインデリア)が設けられています。
現在はリニューアル工事を施行された編成も存在し、今後も活躍しそうな雰囲気ですが、一方で未更新のままの編成も数多く残っており、近い将来の8000系完全置き換えなどとも関連して何らかの動きが発生することが予想でき、今後に注目したい形式です。