1991年11月29日、南北線駒込〜赤羽岩淵間の部分開業と同時に営業運転を開始した9000系は2016年で登場から25年が経過した事からB修繕(20年程度が経過した車両に施工の大規模修繕工事)が発表され、量産先行車第1編成を含む初期製造の8本が対象になりました。東京メトロ南北線では都営三田線、東急目黒線と共に8両編成化を推進していますが、これらの編成は増結の対象外とされ6両編成で継続して運用することが明言されています。一番最初にリニューアルされたのは第5編成で、2016年8月15日より運用入りし、運用復帰前には報道公開もされました。
B修繕後の第3編成。量産先行車の実績を踏まえて南北線第一期開業に向け導入された量産車編成です。急勾配が多い路線である為、出力増強を求められたことから当時の営団地下鉄で初のGTOサイリスタを用いたVVVFインバーター制御車となりました。1992年にも予備車として第8編成が登場しており、制御装置のメーカーは第2-4編成が日立製作所、第5-8編成が三菱電機製とされ、6両化の際には4両編成だったこれらに組み変え工事を実施した為、量産車は機器が編成内で統一される一方先行車の第1編成のみ日立・三菱が混在し、制御装置が発する磁励音が編成内で異なる特徴的な組成となっていました。
三菱製GTO-VVVFだった第8編成。先頭車にはスカートが新設され、エメラルドの帯色は踏襲しつつ柔らかさと躍動感を持たせたウェーブデザインになり車体上部にも装飾が施され、行先表示はフルカラーLED化されるなど大きく印象を変えました。意外な事に集電装置のシングルアームパンタへの換装は行われず上昇検知装置の追設に留まるのが興味深い点です。編成により分かれていた制御装置は三菱電機フルSiC-MOSFTによるものに統一され主電動機出力が190kwから225kwに増強した新規品に換装、代わりに中間の9300号車を電装解除し3M3T組成に改めています。
化粧板・床敷物が更新され、大型の座席端の袖仕切りが目立つ車内設備。特徴的だった車端部のボックスシートは撤去されフリースペース化されました。これにより、東京メトロの車両は在籍する車両全てがロングシート車となり、デュアルシート装備車を導入した京王電鉄と入れ替わりに大手私鉄ではクロス(ボックス)シート設備が存在しない唯一の事例になりました。
車内案内表示器は登場時としては非常に画期的だった2段表示が可能なLEDスクロール式のものを搭載していましたが、液晶画面に更新されました。同時に開閉時のチャイムも1回のみ鳴動する営団地下鉄タイプから3回鳴動するスタンダードなタイプに改められています。
2019年に8編成全ての修繕が完了し、何もなければ10年程度は安定して活躍するものと思いますが南北線は先述の8両化や品川延伸を始め、相互直通運転を行う埼玉高速鉄道も1編成のみであり、仕様は未定であるものの8両編成の新型車導入を発表しています。令和世代の車両と遜色ないB修施工車とはいえ、今後の計画次第では未更新のまま残る後期車と共に丸ごと置き換えられてしまうこともあり得るかも知れませんね。