二つ星の空

(旧「風からの返信」-11.21.09/「モーニングコール」/「夢見る灯台」/「海岸線物語」)

天使達のように(「四日間の奇蹟」補足)

2005-06-16 23:56:47 | 映画「四日間の奇蹟」
四日間の奇蹟、補足。

おいらにとって、この映画は「リアル」だった。ファンタジーなんだとは思いながら、そこに描かれている人は、身近にいそうな気がした。

***

個人的な話で恐縮だが、おいらの知人の女性は、他人に尽くすことで自分の不幸を癒してきた人だ。趣味も娯楽も知らない。おいらは、そんな彼女にちょっとでも変わってほしくて、おいらが唯一できるゲーム、つまり囲碁を教えた。

そんな彼女が囲碁教室に行くようになって、最近1人の女性にとても助けてもらっているらしい。その人は明るくて優しくて、彼女のことをいつも気にかけてくれる。(さすがに囲碁教室は男ばっかりらしいから。)

その快活な女性は、大学生のお嬢さんを脳腫瘍で亡くされた。以来、何年たってもまだそのことを現実のこととして実感できないのだという。

彼女は、喪失感を埋めるように他人を助け続ける。夫を介護し、他人を助け、いつも明るく忙しく過ごしている。

話を聞くだけで、おいらは切なくなる。世の中に、笑顔で人を救いながら、どうにもならないことに苦しんでいる人はどれだけたくさんいることか。

***

「四日間の奇蹟」に出てきた様々な患者さん達や家族達。彼らを観ながら、その人達の心の奥に広がる喪失感や苦しみのことを考えた。

敬輔の苦しみ。真理子の苦しみ。千織の苦しみ。倉野医師の苦しみ。患者さんの苦しみ。家族の苦しみ。でも、そこには、優しさも安らぎも、同時にあるのだ。そして、優しさは、苦しみを埋めることはなくても、苦しみに寄り添い続ける。

言葉で語られない、人の奥に広がる荒野の何と圧倒的なことか。

そして、死んでいった千織の両親の、語られなかった人生。そこにあっただろう豊かさと哀しみ。

安易な同情や感傷にならないよう気をつけながら、また、観に行きたい。そう思う映画だった。
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四日間の奇蹟を観た(ネタばれあり)

2005-06-16 23:35:06 | 映画「四日間の奇蹟」
ついに観ました。煮詰まりすぎて仕事も進まない、とゆーことで色々と自分に言い訳し、職場には当然「病休」っつーことで(笑)。明日から来週まで息着く間もなさそーなんです。自衛のための休暇を要求します、ってなことです。(わがままだってわかってるけどさ。)

おいらの他には、年輩のサラリーマンとか、地味そーな大学生とか、、、何か男ばっかりなんですけど(苦笑)。「お前らどーゆー事情でこの時間帯に、しかも1人でここにいるんだよ?!」とか心の中でつっこみつつ(当然、おいらも彼らにつっこまれていることと自覚しつつ)、全員が行儀良くエンドロールまで堪能した後は、皆足早に黙々と立ち去っていったのでした。平日の映画館っておもしれー。。。^-^;帰り際にちらっと見えた映写技師の兄ちゃんは、今日の観客の中に何か共通点を見つけただろうか。そんなことがちらっと気になるおいらも自意識過剰だな。

映画の感想としては、予想以上によかったです。自分の趣味に合う映画だ。ちらしを読んだら、佐々部監督が「悪人が出てくるような映画は作りたくない。自分の家族に誇れるような内容の映画を作りたい」ってインタビューに答えていた。納得。これなんだな。彼の原点は。

すごいと思ったのは、一歩間違えばわざとらしくなってしまいそうな、そんな性善説のストーリーの中で、映画の中の登場人物達が、偽善的にも人工的にも見えず、皆、「生きて」感じられたことだ。最初(年少故に)心配した尾高杏奈ですら、「人形」ではなく、きちんと「生きて」いた。すごいよ、本当に。

唯一違和感を覚えたのは「落雷」の場面と、「患者達が真理子の見舞いに来る」場面の構成だったけど、これはおいらの行動パターンにないから、というだけのことだろう。雷があんなに鳴ったら千織は怖がるだろう、とか、しかも雨までぱらつき始めたら、ダッシュで屋内に戻るだろう、とか。(でも、滅多にないくらい千織は興奮して遊んでたのだから、雷も気にならなかったのかも。と解釈。)患者さんが病院に押し寄せたからって、平田満演じる藤本所長があんなに大声を出すことはないだろう、とか。(でも、彼も動転してたんだろうな。と解釈。)

石田ゆり子がとてもよかった。彼女があんなに美しいとは、はっきり言って今日初めて気づいた。彼女の哀しげな笑顔が胸に焼き付いている。難病ものとはまた違う、苦しみを背負った、でも、限りなく透明な笑顔。

尾高杏奈も、怖いぐらい石田ゆり子に見えた。いや、真理子か。最初は「大丈夫か?」と思ってはらはらしたが、気づいたら、千織の顔が写っているのに「真理子は今何を思ってるのだろう」なんて考えていた。

倉野夫妻も、長谷川未来も、他の人達も皆、よかった。松坂慶子は、本当にいくつになっても綺麗だなぁ。。。と感動。(おいら、吉永小百合とか、松坂慶子、倍賞千恵子、浅丘ルリ子なんて大好きだから、もう出演してるだけで感激なんだけど。)

そして、吉岡秀隆は、最高だった。例の「どこまで吉岡でどこまで敬輔なんだ」状態で、心地よく観客を酔わせてくれた。ピアノも最高。彼の「月光」の解釈は、すげー好みだ。あのテンポ。あの音。うん、敬輔はそう弾くんだな、と思わせてくれた。(運指は片方の眼だけで観てたけど、それでいーんじゃないかと思う。いや、実際うまかったよ。)吉岡のピアノ指導の村松嵩継って人はぐぐっても、ほとんどわからない。メイキングに一瞬写ってたんだが。彼の弾く月光も聞いてみたくなった。(弾いてるかどうか、知らないけど。)

千織が、敬輔や真理子の寄り代になって、彼らを救ったように、吉岡は、観客の寄り代になって、観客の心を浄化してくれるんだな、と思った。おいらは、吉岡になったつもりで、千織や真理子を見守りながら映画を体験した。それは、吉岡の演技と心の故だと思う。だって、台詞はすごく教条的なのに、「ああ、こいつは苦しみながら心底そう思っているんだ」と感じさせてくれるんだから。本当に、「自覚のない天使達の物語」だ。心が温かいもので満たされて、映画館を出ることができた。ありがとう、心から。
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