一昨日 茨木のり子さんの「倚りかからず」という詩集の文庫本が届きました。
10年前ぐらいに茨木のり子さんを新聞で知って本を購入したことがあります。
その時は『自分の感受性くらい』という詩に惹かれて購入しました。
今回は「倚りかからず」という詩に惹かれて購入しました。
「倚りかからず」
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
この詩のように自分の頭で考えなくてはと思いながら
出来ていません。
戦前 国のために青春を台無しにされた茨木さんは、自分で考えることが一番と
身をもって感じられたのでは。
最初に気に入った詩。
「自分の感受性くらい」
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
何度読んでも素晴らしい詩ですね。
村下孝蔵 - 初恋