ウード奏者 松尾 賢 のブログ(アラディーン主宰者)

ウード奏者、ダラブッカ奏者、サズ奏者、歌手、アラブ、トルコのオリエンタル音楽演奏家・作曲家である松尾賢のブログ。

タラフ・ドゥ・トランシルヴァニアを見て

2010-08-15 03:54:32 | 音楽
ご招待に預かり、なんと、一番前のど真ん中の席でタラフ・ドゥ・トランシルヴァニアの5人編成のアンサンブルを見させていただきました。

しかも、ホールに着いた早々、久しぶりに関口義人さんに出会い、色々とお話させていただきました。

さて、会場は、神奈川県立音楽堂「木のホール」という素晴らしい音響のホールでの文字通り生演奏で、久しぶりのマイクを使わないアンサンブルに酔いしれました。

しかし面白かったのは、伝統曲の最初の第1楽章みたいなパートがゆったりとした5拍子(?)だったり、その後エキサイティングなパートになると、突然9拍子になったりと、やはり西洋のクラシックとは違う音楽なんだな、と改めて実感しました。

きっと、これはダンス曲なんだろうな、どんな風に踊るのだろう、なんて想像して聞いていましたが、

今回来日した5人のうち、リーダーでヴァイオリニストの Kalman Urszui と、コントラバスの Aladar Pusztai 以外は初めての日本だとか。

面白かったのは、もう一人のヴァイオリニストで今回演奏した曲の半分のリードを取ったEmil Mihaiu の素朴な出で立ちと、非常に落ち着いた、それでいて正確で素晴らしい演奏と、

こういった舞台にあまり慣れていないというか、素晴らしい演奏を披露したのに、「どうだ!」みたいな、自己顕示をするでも無く、

「どうも」と、ペコリと少し恥ずかしげにお辞儀する姿が非常に印象的で、数人の女性客から「カワイイ~。」と言われていました(笑)。

ともあれ、2007年のラ・フォル・ジュルネに出演していたタラフ・ドゥ・ハイドゥークスを見たときに感じた「どうだ!」みたいな強いエネルギーとは違うモノを感じました。

タラフ・ドゥ・トランシルヴァニアというこの5人編成のタラフは、逆に何でも上手に、しかもジプシー物なら、ジプシーらしく、伝統曲であれば伝統曲らしく表現でき、

公演の後半にKalman が見事に演奏しきったチャルダーシュや、ブラームスのハンガリー舞曲など、洗練された素晴らしい音でした。

しかし、一番前で見ていると、各人の息遣いというか、演奏中の心理状態というものが良く見て取れるもので、

Kalman がリードを取っていた曲の途中、突然、彼が少年のように見えた瞬間があり、きっと大好きだったヴァイオリンを、こうやって小さい時から弾いていたんだな、なんて勝手に想像してみていました。

やはり、訓練された演奏家が出す音を直に感じる事って本当に素晴らしいですね。

自分も、そういう物を人に感じてもらえるような演奏家になっていかねば!と改めて思った良い一日でした。