1) 釉の厚さに付いて
施釉する際、釉の種類によって、厚みを代える必要が有ります。
必要な厚みにしないと、所定の色や、結晶が出ません。
① 施釉時の、標準的な釉の厚みを、以下に示します。
透明釉:0.6 m m 不透明釉: 1.2 m m 艶消し釉:2.0 m m 結晶釉:2.0 m m
流紋釉:2.0 m m 。 一般に 2.0 m mを超えてはいけません。
尚 焼成した後の釉の厚みは、施釉時の半分です。
② 釉が薄い場合。
どんな釉でも、釉が薄いと、光沢が無く、「ざらついた」肌となり、色は茶色や、
オレンジ色になります。
③ 施釉の際、厚みを調整する方法。
a) 釉自体の濃度を、調整する方法
・ 素地が粗い場合や、素焼温度がやや低い場合、釉の濃度をやや薄く
します。素地の吸収性が強く、釉が厚くなり易い為です。
・ 筆や刷毛で塗る場合や、スプレー掛け、流し掛けは、やや濃度を厚く
します。尚、刷毛塗り等は、素地が水分を、直ぐに吸収する為、釉が
伸びず、塗りづらいです。
釉にアラビアゴムや、デキストリン、C M C(化学のり)等を添加します。
・ 浸し掛け、ガバ漬け、等は標準の濃さにします。
(これは、次の時間による、調整が出来る為です。)
尚、浸し掛け、ガバ漬けは、大きな作品には、向きません。
釉の量が大量にいるからです。
b) 施釉時間で、調整する方法
・ 私の場合では、一般の食器や、花瓶などは、浸し掛けで、普通の厚みで
3秒で、4~5秒と長くなるに従い、釉が厚くなります。
但し、6秒以上浸すと、反って釉は薄く成ります。
(釉が塗れるのは、素地が水を吸収する事により、釉も素地に張り付く
からです。6秒以上に成ると、逆に水を吐き出す事になり、釉が薄く
成ります。) 又、釉を厚く掛けたい時は、濃い釉を一度掛けする
よりも、薄めの釉を、時間を置いて、二度掛けした方が、安全に、
濃く掛かります。
c) 釉を良く撹拌してから、使う。
釉は沈殿し易いです。それ故、撹拌直後に使用します。
釉の容器の上部と、底部で、濃度が異なれば、施釉に濃淡が出ます。
作品が複数個有る場合、作品1個毎に、撹拌が必要な釉も有ります。
・ 沈殿防止剤が、市販されていますが、効果は疑問です。
2) 釉は混合して、使わない事。
釉の色は、単独で使う様に、調合されています。
絵の具の様に、二色の中間色が出ることは、稀です。思わぬ色が出ます。
大抵の場合、汚い色に成ることが多いです。
① 釉を二重に掛ける。
a) 二色以上の釉を、重ねて塗る事は、問題有りません。
但し、どの色を先に掛けるか(下に成る色)によって、重なった部分の
色が、大きく変わります。 後に塗った色が、優先して出ます。
b) 収縮率の違う釉を、二重掛けすると、「釉はげ」などが起こる場合が
有りますから注意。
c) 重ね塗りをすると、釉の乾燥が遅く成ります。
一般に、乾いた素地に、施釉すると、30数秒で持てる状態に成ります。
重ね塗りをすると、素地の吸収が悪く成り、乾燥が遅れます。
(底に付いた釉を、刷毛で落す場合、先に、底の釉を落してから、重ね
塗りした方が、時間の節約に成ります。)
d) 複数の釉を、一つの作品に、上手に、塗り分ける事は、かなり難しい
事です。基本的には、筆や刷毛で、塗る事に成りますが、釉の濃淡が出易
く、均一に塗れません。簡単な方法は、生の時(制作時)に色土や、
色化粧土で、表面に色を付けるか、素焼後、下絵付けをし、透明釉を塗る事です。
(但し、出来上がった作品の、風合いは、大分異なります。)