失透釉とは、透明でない釉の総称で、具体的には、乳濁釉、結晶釉、艶(つや)消釉を言います。
但し、狭い意味で、透明でなく光沢のある釉のみを失透釉と呼ぶ事もあります。
透明釉や乳濁釉、艶消釉になる原因は、塩基性成分(カルシュウム、ナトリウム、カリウムなど)を
一定にした場合、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)の配合比率によって決まります。
(この件に付いては後日述べる予定です。)
1) 乳濁釉について。
透明釉を乳濁釉に変化させる方法に、3つのやり方があります。
① 分相を起こして乳濁させる方法。
骨灰や蛍石、酸化チタン等の乳濁剤(失透剤)を添加して、分相を起こす方法です。
これらを少量添加すると、釉に溶け込み分相を起こし乳濁します。
注1: 分相とは、同じ釉の中で、性質の異なるガラス同士が混じり合わず、その境界面で
光が屈折、攪乱(かくらん)、乱反射して、乳濁した状態になるものです。
注2: 骨灰は主に、牛骨を使います。燐酸を多く含み低温釉の乳濁剤として、利用します。
多量に添加したり、高温で焼成すると、光沢が無くなり、ピンホールが発生し易いです。
・ 蛍石の主成分は弗化カルシウムです。尚、蛍石の名前は、熱すると蛍の様に光る事
から来ているとの事です。
・ 燐(りん)酸を多く含む材料に木灰(樹木や樹皮の灰)や木根、卵殻、獣骨などが
あります。その他、「りんごの実の芯」に多く含まれているとの事で、この灰を使うと
良いそうです。
注3: 酸化チタンを多量に使うと結晶が析出します。
酸化チタンを含む物質にルチル(金紅石)があり、チタンの含有量は、85~98%程度
で、他は酸化鉄の不純物を含みます。添加量に応じて全く異なる乳濁になりますので
予想が困難の面もあります。
② 結晶作用で乳濁させる方法。
目に見える程、大きな結晶が析出するのが結晶釉で、結晶が確認できないのが、乳濁釉
です。 マグネサイトやジルコンを添加し、結晶を作り出す方法です。
) マグネサイト: 炭酸マグネシュウムが主成分で、長石を熔かす性質があり、冷却時に
細かい結晶を生じ乳濁します。 多量に添加すると、マット状になります。
又、貫入防止の効果もあります。
) ジルコン: 酸化ジルコニュウム、ジルコニアなどの名前で市販されています。
ジルコンは元素ですので、その化合物を使います。 酸化、還元共白く濁ります。
次に述べる酸化錫(すず)が高価である為、最近の乳濁釉に多用されています。
③ 釉には熔けず、光を乱反射して乳濁にする方法です。
酸化錫(すず)は比較的高価ですが、昔より、全ての釉に対して乳濁剤として使われます。
白色度に優れ、皮膜力も強いです。 酸化焼成の方が、乳濁が強く出ます。
但し、酸化錫の粒子が極く微細の場合には、8~10%熔け込み、乳濁しない事もある様です
・ その他の同じ様に作用する乳濁剤に、酸化アンチモンがあります。
今回は、透明釉に乳濁剤を添加しましたが、各々の色釉に添加して、その色の乳濁釉を作る事も可能
です。 乳濁する原理は変わらないからです。
* 乳濁釉の代表的な釉に白萩釉や、藁(わら)や籾殻(もみがら)、糠(ぬか)の灰を使う釉があり
ますが、これらは、調合の段階で混入させて乳濁釉を作る方法です。この方法については、
第3章で述べる予定です。
今回のテーマは市販の透明釉に添加物を加えて、乳濁釉を作る方法で、趣旨が異なりますので
説明を省きます。
以下次回(マット釉)に続きます。