わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話27 混ぜて作る釉15 釉の改良2(貫入1)

2013-08-27 17:44:23 | 新釉(薬)の話

1) 理想的な釉とは?

   一般的に言われている、欠点の無い釉の条件には、以下の様なものがあります。

  ① 設定された温度で焼成すると、完全に熔け更に釉面が平滑な事。

  ② 釉面に気泡が出ず、焼成時や、作品使用時にも貫入が出ない事。

  ③ 素地と密に熔け合い、密着して剥がれず、使用時にも素地と同様に膨張と収縮を

   行う事。

  ④ 熔けて流れ落ちず、作品の表面を均質で一様に覆う事。

  ⑤ 機械的、化学的抵抗が大きく、良好な耐久性を有するガラス質の事。

  ⑥ 制作時や使用時に無害である事。

 しかしながら、上記条件を全て得る事は難しい事です、釉によっては上記条件を

  逸脱した釉が求められる場合もあります。

 例えば、貫入(かんにゅう、ひび割)や結晶、乳濁、流れ(流動性)の有る釉を求める

 人もいるのは 事実で、工芸品のみならず、普段に使う器にも要求される事も、

 珍しくはありません。

では本日の本題に入ります。

2) 貫入(かんにゅう)に付いて。

 ① 貫入とは単に、乳又は入(にゅう)と呼ぶ事もあり、釉の「ひび割れ」の事です

  「ひび割れ」の大きさも千差万別で、肌理の細かい物から荒くて大きな物まで色々

  あります。貫入の原因は、素地と釉との収縮率の差によって起ります。

  即ち、素地よりも釉が大きく縮むからです。

  窯の冷却時に素地より、釉の方が大きく収縮する結果発生します。

  尚、貫入は、焼成後数日~数年後に突然発生する事もあります。

 ② 貫入を無くす方法には、以下の様な方法があります。

  a) 素地を調節する方法: 素地の縮み率を若干大きくする。

   基本的には、素地と釉では、釉の方が縮み率は大きいものです。

   それ故、素地の収縮を大きくして、釉の縮みに合わせるのも、一つの方法です。

   ここでは、釉について述べていますので、割愛し、詳細は後日述べたいと思います。  

  b) 施釉の方法を検討する: 濃い目の釉を厚く掛けると発生し易いです。

  c) 窯の冷却スピードにも左右されますので窯焚きの方法を検討: 急冷する程

   発生し易いです。

   完全に冷却しない内(100℃以下)に窯出しを行うと、貫入が入り易いです

   但し、窯の冷え具合は、窯の大きさ、壁の厚みにも関係します。

  d) 釉を調整する方法: ここでは、釉の調整で貫入の発生を予防する方法を

   述べます。即ち、窯の冷却時に素地より、釉の方が大きく収縮する結果発生します

   ので、その対策を 述べます。

 ③ 貫入発生の問題点は以下の通りです。

  a) 表面を覆うガラス質の表面が、「ズタズタ」に分割された状態になります。

   その為、釉は機械的にも弱くなるだけで無く、茶渋や食物カス、洗剤のカズ等の

   汚れがひび割れ部に進入し、作品の表面が汚れ、汚く着色する場合も多いです。

   多くの場合、釉の表面のみでなく、素地の近くまで亀裂が入っています。

  b) ガラス質の釉は防水性に優れ、更に、酸やアルカリ等に対して、抵抗性を

   有します。(犯されない事)

   それ故、ひび割れ部から、水漏れや黴(かび)を発生させ難いです。

3) 貫入を予防する。

   基本的には、釉の収縮を少なくし、素地の収縮に近づける事です。

 ① 貫入を無くす一般的な方法は、珪石(珪酸)を増やし、熔融剤を減らす事。

   注: 二酸化珪素は、全ての原料の中で、一番収縮が少ない物質と言われています。

   熔融剤には、アルカリ元素とアルカリ土金類があり、その種類によって収縮率に

   差がでますい。

  ・ アルカリ元素では、ナトリウム、カリウム>リチウム

  ・ アルカリ土金族では、カルシウム>ストロンチウム、バリウム、亜鉛華>マグネシウム

   但し、手元の釉から、熔融剤を取り除くのは、不可能ですので、珪石(珪酸)を加える

   事に成り ます。

 ② 釉の弾力性を増す方法。

  収縮とは、お互いに引っ張り合いながら縮む事で、釉がゴムの様に弾力性があれば、

  釉が引き伸ばされても、「ひび」が入らない事に成ります。

  その様な材料として、錫(SnO2)、ジルコン(ZrO2、4%以上)、

  チタン(Ti2、2%以上)が 有ります。

  但しこれらは、乳濁釉にもなりますので、添加量に注意が必要す。   

 ③ 素地と釉の間を中間層といいます。即ち、釉が素地の表面に食い込んでいる層で、

   この層が  厚い程、素地と釉の緩衝材として働き、貫入を防ぐ事に成ります。

   貫入のある釉に、硼酸を5~10%加えると、貫入を解消する事が出来ます。

   これは、硼酸と水の混合物が素地に吸込まれ、素地を熔かす為、中間層が発達

  すると考え られています。

  ・ 又、焼成温度を若干上げたり、焼成時間を長くする(ならし時間を長くする)と、

   中間層が発達するとも言われています。

 ④ 釉掛けの厚みに左右される。

   釉には、薄く掛けた方が発色や光沢が良い場合と、厚く掛けた方が良い場合が

   あります。厚く掛ける程貫入が多く出ます。これは、素地に密着した釉は自由に

   動けませんが、素地よりやや離れた釉には移動の自由が生じ、強く引っ張れ易く

   なる為です。

4) 亀裂釉について。

以下次回に続きます。

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