今回のテーマは、基礎釉に、鉄分を添加 して色釉を作る方法です。
色釉を作る方法は、前回までにお話した透明釉、乳濁釉、マット釉に金属顔料を入れて作ります。
金属顔料には、鉄以外に銅、コバルト、マンガン等があります。
特に鉄は添加量や焼成の仕方によって、黒、褐色、黄色、赤、緑、白などの様々な色に変化します。
1) 鉄の種類。(鉄の酸化物、鉄を含む物質)
① 弁柄(べんがら)、紅柄、: 化学名は酸化第二鉄(FeO2)で、赤い金属の粉です。
天然の物も有りますが現在では、硫酸鉄から人工的に精製された物で、最も一般的な鉄の
原料です。 多くの生の釉が赤いのは、弁柄が使われている為です。
精製度が高い(100%の純粋に近い鉄分)物から、やや精製度が落ちる弁柄など、ランク付けて
市販するメーカーも有ります。純粋に近い物は、面白味がないと、敬遠する人もいます。
② 酸化鉄: 酸化第一鉄(FeO)の事で、「黒錆(さび)」とも言われます。
不安定な物質であるため、自然にはほとんど存在せず、蓚酸鉄 (しゅうさんてつ)を酸素の
少ない状態で、焼成酸化すると得られます。強磁性体の黒色の粉末状の鉄です。
水には殆ど溶けるませんので、釉にも殆ど使用しません。
③ 砂鉄(黒浜): 磁鉄鉱が風化して分解され、海岸や川岸に集まったものです。
約80%の鉄分を含む黒っぽいもので、 鉄釉やチタン結晶釉、鉄絵の原料 として用られて
います。
④ 鬼板、来待石、益子赤粉、黄土その他。
a) 鬼板(おにいた): 含鉄土石類で鉄分を20~30%含みます。鉄絵の具としても使用
します。 不純物を多く含む為、色の変化も大きく、好んで使う人もいます。
b) 来待石(きまちいし): 島根県で採取される含鉄土石。鉄分約6%を含みます。
ガラス質で単味、又は土灰とで茶褐色系の釉になります。
c) 益子赤粉(赤土): 益子で柿釉などの鉄釉や、黒化粧土として使われる含鉄土石です。
d) 珪酸(けいさん): 酸化鉄(約6%)に微量のリン酸を含みます。来待石に性質が似ている。
珪酸鉄: 弁柄と珪石を1:1、又は1:3で混合し、焼成された顔料です。
e) 加茂川石: 川原に転がっている鉄分を含む水成岩で、約15%の鉄分とマンガンを含む
珪石質の含鉄土石です。単味でもよく溶け、黒楽の釉として使われます。
佐渡の赤玉も同じ様な物です。8~900℃で焼き水中で急冷すると、粉砕し易いとの事です
f) 黄土:中国黄土、阿蘇黄土などの種類があります。
鉄化合物を多く含む岩石が、風化する事により一部溶け出し、粘土の中に溜まり、黄色や
赤色の土に成ります。これを黄土又は赤土とよびます。
鉄分の含有量は不明ですが、かなりの量を含んでいるはずです。
黄土は釉としても使いますが、他の白い粘土に混入して、「テラコッタ」粘土にします。
やや低い温度で焼成すると、「テラコッタ」特有の赤朱色が出ます。高い温度では黒っぽく
なります。
g) 土灰、各種木灰類。
天然や合成の土灰や、木灰には大なり小なり鉄が入っています。それ故、土灰釉はやや
酸化焼成で黄色、茶色に還元焼成で青色、緑色(ビードロ色)となります。
民芸調に仕上げるのに向いています。
一つの金属で多くの色を作りだせるのは、鉄のみです。
次回は鉄釉の実際の作り方をお話します。