鉄釉は同じ釉でも、素地の違い、釉の掛け方(厚い、薄い)、窯の種類や形、窯詰め方法、燃料の違い
窯の焚き方(酸化、還元、徐冷)など、多くの条件の差によって、色や艶、結晶状態、釉肌などが、
非常に大きく変化する釉です。
釉に於いても、どの様な釉の構成にするのか、鉄分は何処から採るかによって、大きく異なります。
1~2%程度の鉄が釉に熔けると、還元焼成で、青、緑色系の釉になります。酸化焼成では茶、黄色系
に成ります。更に鉄分が多くなると、酸化、還元に関係なく、褐色から黒色になります。
1) 天目釉
天目釉は、鉄釉(てつぐうり)の代表的な釉で、種類も多いです。
黒釉や茶褐色、茶色の釉、更に結晶釉や、流動性のある釉など多彩です。
① 黒釉は鉄分が8~15%程度と多量に添加し、酸化焼成すると発生します。
黒釉には褐色掛かった黒、紺色掛かった黒があります。
前者はカルシュウム(CaO)が多い場合で、後者はカルシュウムとマグネシウム(MgO)があると
発色します。 黒釉の代表例は、黒天目や油滴天目等があります。
・ 土灰(天然、合成)による黒釉薬は、マンガン、チタン等の不純物が含まれている為、更に
釉に面白さが出ます。
② 天目釉は比較的厚く釉掛けします。その為、釉に流動性が増し、色の濃淡が出易いです。
窯の温度が高く熔け過ぎる場合には、柿釉や飴釉掛かった斑(まだら)文様が出る場合も
あります。 又、釉が薄く掛かった場合にも柿、飴、鉄砂の色を示します。
③ 天目釉の歴史は古く、当時の呈色剤には不純物が多く含まれ、その為、現在の釉とは微妙に
異なります。昔の天目釉を理想とする人には、各々独自の調合をしている様です。
④ 天目釉には、黒天目以外に、油滴天目、禾目(のぎめ)天目、耀変(ようへん)天目、柿天目、
玻玳(たいひ)天目、木の葉天目などがあります。国宝や重要文化財に指定されている、
作品も多いです。
2) 飴(あめ)釉と蕎麦(そば)釉。
強い光沢のある褐色の釉に飴釉があります。更に飴釉に緑黄色から金色の結晶が散りばめ
られているのが蕎麦釉です。
① 飴釉。
基礎釉に5~8%(重量比、外割り)の鉄分を添加して、酸化焼成で、淡茶色から黒褐色の
艶のある釉を作る事ができます。鉄分は弁柄や黄土から採る事が多い様です。
・ 益子焼きの飴釉は、益子赤粉(芦沼赤粉)5%と二酸化マンガン4.5%(いずれも容積比)を
添加する事で得られるとの事です。 マンガンの代わりに土灰や木灰を使う事もあります。
尚、黒釉と飴釉の中間の色に、黒飴と呼ぶ強い光沢のある釉があります。
② 蕎麦釉。
) 飴釉に5%(重量比、外割り)のマグネサイトを添加することで、淡黄色の結晶の斑点
(はんてん)のある蕎麦釉を作る事が出来ます。マグネサイトの量を増やせば、結晶が出来
易く斑点の数が増えます。酸化(褐色掛り)と還元(緑掛る)とも結晶がでますが、全体に
色味が異なります。
) 逆に蕎麦釉の結晶を消すには、珪石を20~40%程度添加します。
但し、珪石が多くなるに従い、釉は黒くなります。
3) 青磁釉と黄瀬戸釉。
以下次回に続きます。