3) 青磁と黄瀬戸釉。
② 黄瀬戸釉。
黄瀬戸釉は、灰釉の古瀬戸釉を進歩させ、くすんだ色を意図的に改良して、黄色味を帯びた
釉にしたものと、言われています。それ故、古瀬戸釉と大変似た構成成分になっています。
) 前回お話した青磁釉をそのまま、酸化(又は中性炎)焼成すれば、黄瀬戸釉となります。
即ち、青磁釉と黄瀬戸釉とは、本質的には、同じものと言えます。
即ち鉄分2%程度外割りで入れて作ります。艶のあるスッキリした色に成りますが、深味も
少ない釉肌になまります。弁柄はほとんど100%酸化鉄ですが、鉄分を黄土から採る場合
には、10%程度添加します。更に、40%程度の松灰を添加する事で、釉が熔け易くなり、
ややマット状にもなり、雑味も加わり深味も出ます。
) 釉は素地の色に影響されます。
信楽の白土には、若干鉄分が含まれますので、褐色掛かった黄色になります。
磁器土や半磁器土などの白い土では、明るい澄んだ黄色に焼き上がります。
) 黄瀬戸釉には、「油揚げ手」と呼ばれる表面が光らず、「油揚げ」の様な外観を持つものが
あり、理想の黄瀬戸と呼ぶ場合も有ります。
アルミナ(Al2O3)成分が多くなると、釉が十分熔け切らずに微細な結晶が析出し、失透
する事で、表面が「かせた」感じになります。
・ 黄土は、鉄の含有量は弁柄より少ないですが、アルミナ成分を多く含みます。
) 施釉は好みによりますが、薄く掛けた方が透明感のある黄瀬戸と成ります。
4) 伊羅保(イラボ)釉。
) 黄瀬戸釉に似た釉に(黄)伊羅保釉があります。流動性のある釉で、焦茶色で強く斑
(まだら)に流れ落ちる筋(文様)が特徴です。
) やや厚掛し、酸化又は還元で焼成しますが、酸化焼成の方が黄色味が強い様です。
又、薄掛けして、流動を抑え黄色味を強く出す方法もあります。
) 成分的には、以下の様な調合例があります。
・ 土灰50、黄土50、
・ 土灰50、長石50、黄土20
・ 土灰50、天草陶石、黄土20
黄土又はこれに類する土は、各地で採取する事は容易に入手可能です。
その他の原料も手に入り易いですので、工夫して独自の伊羅保釉を作るのも楽しみです。
) 伊羅保には種類も多く、添加物によって色に差がでます。
・ 緑流伊羅保: 銅系の釉。 ・ 朝鮮伊羅保: 朝鮮系の釉。
・ 紺流伊羅保: 呉須系の釉。 ・ 朱斑滴伊羅保: 朱赤系の釉。
・ 鉄流伊羅保: 鉄系の釉。 ・ 青伊羅保: 緑色の条痕。
5) 鉄赤釉。
赤褐色で光沢のある釉です、渋めの赤から赤味が強い赤まで色々あります。
均一な発色では無く、赤い斑点や、黄味掛かった斑点がでます。
) 弁柄(Fe2O3)10%と骨灰3%を添加すると、黒地に赤い斑点が現れます。
) 土灰透明釉に弁柄15%とマグネサイトと骨灰を添加すると、赤く発色します。
) タルク釉に骨灰などの燐酸成分を添加すると、酸化還元とも発色しますが、還元焼成の
方が綺麗に発色し易いです。
次回は銅釉に付いてお話します。