市販の透明釉(基礎釉)に鉄分を含む弁柄などを添加して、色釉を作る方法に付いて述べていますが
ここでの透明釉は主に、石灰(カルシウム)系の透明釉です。透明釉にはその他、マグネシウム系
(MgO)、石灰バリウム系(BaO)、石灰亜鉛系(ZnO)の釉があります。
一般には、石灰系の透明釉が多く市販され使われています。又土灰系(MgO系)の透明釉も比較的
多く市販されていますが、それ以外の透明釉は、各社のカタログを見ても余り見かけません。
基礎釉の違いにより、鉄分の反応に違いがありますので、参考までに述べておきます。
(尚、基礎釉の調合に付いては、第三章でお話する予定です。)
◎ 鉄釉に用いる基礎釉の特徴
① MgO釉: 徐冷したり、マグネシウムを多く含むと結晶が析出して、乳濁釉に成り易くなり、
鉄の含有量が増せば、鉄釉と乳濁色が混ざった感じになります。
② BaO釉: 透明感があり、青磁などの青系の釉に適します。石灰釉より熔け易い釉です。
③ CaO釉: MgO釉とBaO釉の中間の発色をします。
④ ZnO釉: 亜鉛(Zn)は他の物質と結合し易い為、鉄の量が多くなると他の釉とは異なる色に
成り易いです。
前置きが長くなりましたが、本日のテーマに移ります。
3) 青磁と黄瀬戸釉
① 青磁釉: 東洋を代表する釉(製品)で、中国(漢、唐、宋時代など)や朝鮮(高麗朝)などで
積極的に作られていました。現在でも事情は同じです。
・ 2%程度の酸化鉄を含んだ釉を還元焼成すると、青磁に発色します。更に、鉄分を含む素地を
使うか、鉄分を添加した素地を使うと、一段と鮮明な青色が発色すると言われています。
) 鉄が青色を呈する理由。
弁柄や珪酸鉄などの酸化鉄が、酸素が剥ぎ取られる還元焼成すると、2価の鉄Fe++の
形になり青緑色に発色します。
) 釉に添加する酸化鉄は出来るだ微粉末にした方が良いようです。
) 木灰が多いと透明感のある、緑色になり、長石が多いと透明感の乏しい青色になります。
現在では「BaO釉」が、比較的容易に入手出来る様に成ったとの事で、透明感のある青味を
帯びた釉が、容易に作られる様に成りました。
) 青磁は鉄分を増しても、色が濃くなる訳では有りません。
青磁の色を濃くするには、釉を2度、3度と重ね塗りする事です。
厚く重ね塗りする為、釉が熔けて下方に流れ易くなり、口縁部の釉が薄くなり素地肌が
透けて見え、紫掛かった色となります。又、釉を掛けない糸尻には、鉄分の多い素地が褐色
に成りますので、青磁の上物では「紫口鉄足」と呼び、珍重されています。
) 青磁釉の色の違いは、釉の成分の違い、施釉の仕方の他に、還元を掛ける温度や、還元の
強さによっても、大きく変化します。
) 青磁の種類は多く、砧青磁、天竜寺青磁(酸化クロムを入れる)、七官青磁、珠光青磁、
高麗青磁(朝鮮青磁)、銅青磁(銅で着色)などがあります。
次回黄瀬戸釉に続きます。