わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話20 混ぜて作る釉8 銅釉1(織部、辰砂)

2013-08-15 21:35:56 | 新釉(薬)の話

釉の着色剤として、鉄と共に古くから使用されている金属に銅があります。

一般に銅は酸化焼成で、(青)織部釉の様な緑色に発色し、還元焼成では辰砂(しんしゃ)の様に

赤く発色すると言われていますが、実際にはもっと多彩な色を呈します。

青や赤紫、青紫、黒、場合によっては無色の透明釉にもなるとも言われています。

又、還元焼成でも赤でなく、茶色や緑色を呈する場合もあります。

1) 銅の種類

  ① 酸化銅(CuO): 酸化第二銅と呼ばれる黒色の粉末として市販されています。

     焼成中に蒸発(揮発)する性質があり、発色が不安定に成り易いです。

  ② 塩基性炭酸銅(緑青=りょくしょう): 有毒な劇物の緑色の銅です。

     劇物に指定されていますので、一般には使用しない方が安全です。

2) 酸化焼成

   素地に赤土を使うと、織部の緑が目立ちませんので、白い土を使う方が織部釉の効果が出ます

  ① 石灰透明釉に7%(外割り、重量比)の酸化銅を添加すると、透明感の強い織部釉ができます

  ② 上記の成分に松灰を40%程度添加すると、色彩に深味が出て更に、溶融温度も下がり、

     流動性が増し、流れによる濃淡も現れます。

  ③ 土灰透明釉に7%の酸化銅を添加しても、②の様な状態になります。

  ④ 10%と酸化銅を増やして行くと、緑色が濃く成るのではなく、釉は光沢の無い黒い酸化銅の色

    に成って行きます。(綺麗な色とは言えません。)

3) 還元焼成

   基礎釉に酸化銅を添加し、還元焼成で朱紅色になる釉を辰砂(しんしゃ)釉といいます。

   特に牛血紅(ぎゅうけつこう)や火焔紅(かえんこう)、桃花片(とうかへん)が有名です。

    注: 牛血紅とは、鮮血の色で強い赤が特徴です。1700年頃景徳鎮で発明された様です。

       火焔紅とは、真紅(しんく)の上に藍紫色が煙の様に漂い、燃え盛る炎を思わせまる釉です

  ① 酸化銅を1%以下添加し還元焼成後急冷すると、銅が石灰透明釉に吸収され、透明になり

     ます。

  ② 上記条件で徐冷すると、釉中に熔けた酸化銅が、小さな粒(コロイドと言う)が析出し、赤く

     発色します。還元により酸化第二銅は赤い酸化第一銅に変化します。細かい第一銅は橙色

     ですが、釉中では赤くなります。

  ③ 辰砂の赤は、冷却過程の900℃程度から始まり、室温まで徐冷した場合に一番赤が

     鮮明になります。  

  ④ 同じ酸化銅の量を添加しても、基礎釉に何を使うかによって、赤い色も変化さいます。

   ) CaO釉に酸化銅5%添加の場合: 緑色が混じったぼんやりした赤色になります。

   ) BaO釉に酸化銅1%添加の場合: 深味のある赤い色となります。

      更に、酸化錫(すず)や骨灰を添加すると、輝きが増し質的にも良い釉に成ります。

      酸化銅5%以上になると、還元焼成でも緑色に発色します。

   ) ZnO釉に酸化銅5%添加の場合: 安定感のある(均一な)赤色になります。

   ) MgO釉に酸化銅1%添加の場合: MgO成分を減らし、結晶の析出を抑えると淡いピンク

      色になる場合もあります。(但し焼成条件は難しそうです。)

   ⑤ いずれの基礎釉でも酸化銅を15%添加すると、表面が曇った緑色、又は黒に発色します。

      酸化銅が釉に熔ける量に限界がある為、酸化銅がそのまま残る為と考えられています。

      但し、ZnO釉では、明るい緑色になります。

      尚、表面の曇りは酸化銅の結晶が析出したもので、現在では薄い塩酸に漬けて取りますが

      以前は、栃(とち)の実の殻を入れた水に漬けて取り除きました。

以下次回に続きます。

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