優勝インタビューにこたえる荻野監督と、青木奈波
第24回高校女子駅伝競走大会の結果を分析してみたいと思います。最初に取り上げるのは、5年ぶり3回目の優勝を果たした立命館宇治高校(京都)です。
まず、立命館宇治高校のおさらいをしてみましょう。
住所は、京都府宇治市広野町八軒屋谷33-1
平成6年 立命館と宇治学園の法人合併に伴い宇治高等学校を立命館宇治高等学校に改称しています。教育コンセプトは「世界水準の人間の育成」で、スクールカラーは、宇治茶にちなんでグリーンとなっています。学校の施設は、実に立派で、まるでどこかの大学のキャンパスのようです。このような環境の中で練習ができる選手は、とても恵まれていると思います。地方の高校では、まず考えられません。
そして、主な卒業生には、千葉真子、小崎まり(ノーリツ)などがいます。
今大会の抱負は、「1時間7分台の記録と、立命館宇治高校らしい粘りのレースをする。」というものでした。高校女子駅伝は、最多の24年連続24回目の出場です。
過去5年間の成績は、以下のとおりです。優勝インタビューで荻野監督が、過去4大会を振り返り「地獄のようだった」と述べているのが印象的でした。平成22年から3年かけて選手が徐々に力をつけ、近年にないチームを育てあげたのです。
平成23年 5位 1:8:29
平成22年 6位 1:8:59
平成21年17位 1:11:47
平成20年 3位 1:7:49
平成19年 1位 1:7:6
* 平成21年の大会、直前にメンバーの4人がインフルエンザにかかりました。これはしかたないですね。
それでは、もう一度、今年の記録を振り返ってみましょう。
まず、県大会の記録から 当日気象条件悪し、オーダーのみ参照ください。
チーム記録 1.10.11
1区 青木 奈波(3)19:43
2区 池内 彩乃(3)13:36
3区 岩井 朝香(2) 9:49
4区 廣田 麻衣(3) 9:56
5区 菅野 七虹(3)17:07
次に近畿大会の記録から
チーム記録 1:8:17 総合1位
1区 池内 彩乃(3)19:25
2区 岩井 朝香(2)13:29
3区 関 紅葉(1) 9:21
4区 青木 奈波(3) 9:26
5区 菅野 七虹(3)16:36
全国大会の記録から ( )は3000mの持ちタイム
チーム記録 1:7:22 優勝
1区 管野 七虹(3)7位 19:48 (9:11:13)
2区 岩井 朝香(2)5位 13:11 (9:15:80)
3区 池内 彩乃(3)3位 9:33 (9:18:95)
4区 廣田 麻衣(3)3位 9:18 (9:20:68)
5区 青木 奈波(3)2位 15:32 (9:17:14)
誰も区間賞をとらずの優勝でした。しかし出場各選手の3000mの平均タイムは、9:16。これは豊川高校の出場メンバーと変わりません。早くから優勝候補と目されていました。
1区、菅野七虹の記録、19:48は、区間7位で、トップと9秒差とされてしまいました。今年度の3000mランキングにおいて、9:11は留学生を除くと第1位の記録です。しかも昨年は19:21で区間2位でしたから本来の力が出ていなかったのかもしれません。スローペースというのも災いしたのでしょうか。荻野監督の1区からの先行逃げ切りの思惑はここで外れかけました。
2区の岩井朝香は今回のメンバーでは唯一の2年生です。昨年の全国大会では3区を走りました。3000mの持ちタイムでは、菅野七虹に次ぐ第2位。2区の記録も県大会から18秒も短縮しています。まさに伸び盛りです。区間記録では、区間1位の大阪薫英女学院の松田瑞生と11秒差の5位でしたが、順位を4つ上げ3位となりました。荻野監督の当初の計画ではここでトップに立てるとの公算があったのではないでしょうか。
しかし、ここから日本一の練習を積んだと自負する選手たちの粘りのレースが始まります。
3区は、池内彩乃、12月1日の日体大長距離競技会での5000メートルでは、15:46の好記録を出しています。3000mの記録では、この区間、豊川高校の鷲見梓沙に続く実力者。昨年の大会では2区を区間6位の成績で走っています。区間新記録を出した鷲見梓沙には12秒の差をつけられてしまいますが、堂々たる区間3位の記録で、またしても一人かわしチームは2位に浮上します。
4区は、廣田麻衣、先行の豊川高校の関根花観を追い、いったんは並びましたが、3000mこの区間1位の記録を持つ、仙台育英高校からの転校生、関根花観の前に最後は力尽きてしまいました。しかしその差はわずか4秒でした。そしてこの戦いは、最後の5区青木奈波に託されます。
5区では、青木奈波と、豊川高校1年生・堤優花との一騎打ちとなります。経験と実力で上回る青木奈波の走りは、群を抜いていました。メンバー5人のうち、4人までが京都市内の中学校の出身者。沿道の声援も学校名ではなく、「青木がんばれ!」と個人名で声をかけられるのだそうです。これは、選手にとっても有り難く、大いに力になったでしょう。まさに地元の利を生かし、青木奈波の走りに追い風となったに違いありません。区間賞は青森山田のローズメリーワンジルの15:30でしたが、青木奈波も2秒差の15:32でしたから驚きです。これは近畿大会の菅野七虹の記録を1分以上も上回る好記録でした。
後のコメントで「タスキを受けたとき、ほとんど並んでいたので、自分で決めようと思った。相手を気にせず自分のペースを守って一気にいった」と言っています。この冷静さが素晴らしいと思います。こうして、2位の豊川高校に24秒の大差をつけての優勝となりました。優勝インタビューを受ける青木奈波の表情はとてもさわやかで、安堵感も感じられ勝負の余韻に浸っているように見えました。コメントも素晴らしいものでした。
こうして今大会の抱負である、「7分台の記録と粘りのレース」は十分に達成できたのでした。
大会に合わせて、選手をベストの状態で臨ませること。これが監督の使命だと思いました。
こうして、3年生が卒業し、岩井朝香のみが残りますが、日本一と云われる練習に耐えて、来年のこの大会までにどのような強力なチームができあがるのか、とても楽しみです。
次回は、準優勝の豊川高校(愛知)を分析してみたいと思います。
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