曇りがち。
秋から初冬へ季節がうつろいゆく中、冬色の曇り空が、ベルベットのような色合いで、物憂い土曜日の午後、終日気温18℃の中、隣市である美術館へ、企画展『川端康成コレクションと東山魁夷』を見るために秋色に染まる街路樹を抜けて、ドライヴ。
この美術館は、市内の高台にある高級住宅街に隣接した場所にあって、落ち着いた静かな場所にあります。
そろそろ紅葉の時期を迎えて、黄色や赤に色づいた木立の中・・・。
初めてこの美術館を訪れたのは、今年の4月半ば。
満開の山桜が美しい透明な春の空気の中でした。
4月に来たときは、常設展だけだったので、30分くらいで、一周できたのですが、今回は、企画展もあって、文豪・川端康成のコレクションと彼の小説などの装丁も行った東山魁夷の絵画を中心に、中国・イタリア・ペルシャなどの香炉・茶碗・青銅器・仏像などのコレクション、及び、川端康成の直筆の書画、原稿、文豪(三島由紀夫・坂口安吾・太宰治・横光利一・谷崎潤一郎・林芙美子)達の書簡など、展示物が盛りだくさん。
最終日が、11月4日ということで、来館するひとも多くて、展示フロアには、ひとが一杯。
東山魁夷のあのシンとした画風の絵画もボリュームのある展示となっていました。
この画家は、寒色の画家だなぁ・・・と展示をみて思った次第。
青と白の世界・・・。
川端康成の小説本の装丁も美しい事。
文学と美術が一体化して、こんなにも美しい本があるのだろうか・・・贅沢な装丁で、今、このような装丁にしたら、一冊の単価どれくらいになるのだろうか・・・と、極めて下世話な想像をしたりしました。
一流の作家が、一流の文学者の本を飾る・・・作家冥利に尽きるとは、このことです。
こんな本なら、買いたたかれて1円で、売られることもなく、ひっそりと大事に扱ってもらえそうだな・・・本にとっても幸せなことだし、持ち主にとっても、本を手にするたびに、柔らかで、優しい気持ちになるでしょう。
曇りがちな冬の午後のひととき、美しい本を眺めながら、この美術館に併設された木立の中のカフェで、お茶など飲みたいところでしたが、15:00以降、予約のため、クローズされてしまっていたのが、残念な土曜日でした。