昨日(11月16日)は、渋谷・東急シアターオーブへ、『鉈切り丸』を観劇に。
このところ数年来の劇団☆新感線とは、芸風が少々違う作品となっているようです。
ハードロックバリバリ路線から、進化したような大人の雰囲気への変化なのでしょうか?
いのうえひでのりさんの演出するシェイクスピア:リチャードⅢ世の第3弾。
『朧の森に棲む鬼(市川染五郎・主演)』、『リチャードⅢ世(古田新太・主演)』に続く、三番目の主演は、森田剛さん。
森田さんは、『荒神』、『IZO』に続く、今回は、やはり進化・・・というか、大人の演技力で、源頼範(グロスター公)を演じ抜きました。
不自然な姿勢でのぞむ殺陣は、俳優としては、小柄である彼のマイナスポイントを、美点に変えたと言えるかもしれません。
今回は、相方同行での観劇。
『出演者の中で、森田剛の目が凄い。一番綺麗で、輝いている。あんなに目の美しい俳優だとは、思わなかった・・・。』
相方らしい感想でした。
ヒロインは、成海璃子さん演じる巴御前(アン)。
前回のリチャードⅢ世では、安田成美さんが演じた役どころだけれど、セリフを噛む、言い淀み・・・といった初歩的ミスが、目立ちました。
芸達者な女優陣が、脇を固めているだけに、欠点だけがクローズアップされたようで、前回の安田成美さんも同様・・・やはり、添え物(程度)の華なのでしょう。
本来なら呪いの言葉を吐き続ける建礼門院(マーガレット)に、麻実れいさん。生霊となり、呪いの予言を繰り返すモノノケを格調高く演じているのは、さすが・・・。静かなセリフの抑揚は、正統派。
シェイクスピアのマーガレットとは、また別のマーガレットの新たなる形を作り上げました。
そして、もうひとり。
秀逸だったのが、北条政子(エリザベス王妃)役の若村真由美さん。
楚々として、大人しい役柄の多かった若村さんだけれど、後の尼将軍を、美しさの中に力強さを前面に押し出し、新境地を開いたかのようです。
夫の源頼朝(エドワード四世)演じる生瀬勝久さんとは、あ・うんの呼吸。絶妙な夫婦役。
弟の鉈切り丸に手玉に取られる気の弱い征夷大将軍をコミカルに演じていました。
イト(ヨーク公爵夫人)役は、秋山菜津子さん。
いつもなら、超最強の女を演じたらこのひとであるはずであるが、今回は、少し大人しすぎたか?そんな印象。
梶原景時(渡辺いっけいさん)/和田義盛(木村了さん)のお二人は、バッキンガム公の役どころでしょうか?
換骨奪胎が、非常に上手く行って、鎌倉時代の幕開けの源氏と平家を、薔薇戦争のランカスター家とヨーク家にクロスオーバーさせて、物語は、進んでいきますが、いよいよ終局。
鉈切り丸(グロスター公)を蹴落とし、源頼朝の遺児・おと姫(エリザベス王妃の娘のエリザベス)と婚姻して、チューダ朝が開始されていくリッチモンド伯の登場がなく・・・。
原作とは異なり、この部分のカットは、残念でした。
上演時間の関係もあるのしょう。
『リチャードⅢ世』としての『鉈切り丸』は、最後の山場が、欠けた少し物足りなさが残るけれど、『朧の森に棲む鬼』を踏襲して、舞台に雨を降らせる技術は、秀逸。
新しい新感線の胎動を予感させるような舞台となっているようです。