朝、キッチンで、珈琲をいれるお湯を沸かしていたら、なにやら、恐怖を呼び覚ます羽音がする。
くもりガラスで、よく見えなかったのだけれど、あの大きさは、たぶん・・・オオスズメバチ・・・今の時期だから、冬眠から目覚めた女王蜂だろうか。
スズメバチの女王は、これから、冬眠明けで、弱った身体を養い、巣を作り、産卵して、働き蜂の誕生迄、ひとり戦いの日々を送ることになるのだろう。
誰も助けてはくれない。
たったひとりで、娘達であるワーカーの誕生、育児。
ワーカーが、女王の代わりの働き手となる迄。
昨年秋に、誕生した女王蜂のひとにぎりの蜂だけが、営巣して、女王として君臨する。
そんな女王覚醒の朝だ。
女王の覚醒は、これから始まるであろう過酷な日々には、似つかわしくない程、さわやかに晴れた四月の初夏のような朝。
ブナ木の甘露蜜なんか食べながら・・・種類は違えど、コレは、蜂からのお恵み。
生き延びな・・・女王様。
ヘタレで、アホウな私の応援なんて、女王には、迷惑なだけだろう。
それでも。
生きるか死ぬか・・・存亡をかけての戦闘の始まりの朝。
幸運であれ。
そして秋迄・・・生き延びよ。